その日から早速、オリヴィエとコレットの作戦が実行された。
 作戦といっても何でもない。ルヴァに自分の気持ちを気付かせるために二人が付き合っているように振舞う事だった。
 オリヴィエはそれでルヴァがやきもちを焼かなければそのままコレットと付き合おうと思っていた。
 作戦が始まり最初のほうはルヴァも聖地の中をうろうろとしていたのだが、
 そのうち聖地のあちらこちらでオリヴィエとコレットの二人に出くわすので、だんだん外に出るのもイヤになり、書庫で気持ちを紛らわすかのように整理をしたり、ただ一日読書にふけったりしていた。
 そのうち一日中部屋に閉じこもっているルヴァの所にまで、文献を借りに来たジュリアスやクラヴィス。
 植物の育て方の本を借りに来たマルセルなど、いろいろな人からオリヴィエとコレットの噂は耳に入ってきた。
「どうしたルヴァ。最近そなたらしくないミスが多いぞ」
「あー。ジュリアス。そうですか?私はいつもと変わらないのですけどねぇ〜」
「いつまでも部屋に閉じこもっているとクラヴィスみたいになるぞ」
「ははは。ご心配なく。本当にいつもとかわらないですよ」
 ルヴァはそう言うものの、ジュリアスにも無理をしているのが目に見えた。
「そなた。これから空いているか」
「ええ、特に何も用事はありませんが」
「では、外に行かぬか」
「――外。ですか。今はそんな気分じゃないんですよ」
 ルヴァは首を横に振った。
「そうか。なら私の部屋でチェスの相手をしてくれないか」
 ジュリアスの申し出にルヴァはにっこり微笑み「喜んで」と答えた。

「チェックメイト。ルヴァ本当にどうしたのだ」
 すでに何回やったかわからないくらいゲームをやりジュリアスの全勝。
 いつもなら同じかルヴァの方が少し勝率が良いはずなのだ。
「ジュリアス。今日は調子が良いですね〜」
 自分が負け続けていることに特に何も違和感なくルヴァは言った。
「私の調子が良いわけではない。そなたの調子が悪いんだ」
「そうですかぁ?」
 興奮したように立ち上がり言うジュリアスにルヴァは首を傾げながら答えた。

「そろそろ失礼しますねぇ」
 あのあと2ゲームやり、結局ジュリアスの全勝はかわらずルヴァは席を立った。
 自分の執務室へ戻ろうとドアに手をかけたところ、ドアが開かれた。
「ジュリアス様。例のルヴァ―――」
 オスカーはそこまで言うとルヴァがいることに気がついた。
「ルヴァ。ジュリアス様のところにいたんだな。ジュリアス様また後でお伺い致します。
 頭を下げ、オスカーは部屋を出かけた。ルヴァはその後姿に声を掛ける。
「オスカー。私がどうかしましたか?」
「え?いや。その…」
「ルヴァの様子がおかしいから私がオスカーに原因を調べてもらっていたのだ」
「ジ・ジュリアス様」
 あせるオスカーを見「いいのだ」とジュリアスが答えた。
「は〜。そうですか。私はいつもとかわらないつもりなんですけどね。
 でもみんなに迷惑をかけているようですねぇ〜」
「誰も迷惑とは思っていないだろう。ただ、みなのものが心配しているのは間違いない。いったい何があったのだ。話してみよ」
 ジュリアスにそう言われ、ルヴァはようやく話を始めた。
「こんなことを言うのはなんだか恥ずかしいのですが、どうやら私は――恋をしてしまったようなんです」
「ルヴァが恋!?」
「オスカーっ!」
「いいですよ。ジュリアス。似合わないでしょ。あんなに年の違う女の子を好きになるんですからね」
 ルヴァはそう言ってから【しまったっ!】と言う顔をした。
「じゃぁアレか?コレットのことが気になって気になって仕事がおぼつかなかったのか?」
「ええ。まぁそんな感じです」
「ルヴァともあろうものが…」
「すいませんね。ジュリアス。こんなこと相談するわけにもいかなくて」
「ちょっと待てよ。最近お嬢ちゃんはあの極楽鳥と一緒にいるじゃないか」
 暫く考えていたオスカーが口を開いた。
「ええ。まぁそれもあって部屋を出たくなかったのですけどね」
 ルヴァは苦笑いした。
「あの極楽鳥。一回懲らしめないと」
「だ〜れを懲らしめるって?」
 その声と同時にジュリアスの執務室のドアが開き、極楽鳥ことオリヴィエが入ってきた。
「は〜い。ジュリアス邪魔するわよ」
 圧倒されたままジュリアスは「ああ」とだけ答えた。
「さ〜てルヴァ。アタシたちに何か言いたいことがあるんじゃな〜い?」
「え?何も…」
「とぼけるんじゃないわよ。アタシに言うことがなくても彼女にはあるでしょっ!」
かすかなノックの音がしたと思うと、そっと執務室のドアが開いた。
「―――っ!」
「さ。ルヴァ行ってきな」
 ルヴァはオリヴィエを見、オスカーとジュリアスに視線を移した。
 皆が行けというようにうなずくとルヴァはコレットの方へ歩きだした。
「あ、あのー。コレットちょっと外までお付き合い頂けますか?」
 ルヴァは勇気を振り絞りそう言った。
「はい」
 コレットがそう言うと二人で外へ出て行った。
「あ〜あ。何か今回ってすっごくソンな役回りだったわ。ジュリアス。邪魔したわね」
オリヴィエはそう言うとジュリアスの執務室を後にした。
「一体何だったのでしょうか」
「――――――のだろうか」
残されたオスカーとジュリアスは二人で同時に感想をもらすと首を傾げた。

Fin



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   4年目のお誕生日小説です。
   実はこの話。このサイトを作って3作目くらいに大体出来上がっていました。
   今回加執・修正してようやくこのようにアップすることが出来ました。
   正直最近書いているものと少し雰囲気が違う気がします。
   これはきっと愛の量の違いなんでしょうね(苦笑)
   そして今回はじめて誕生日小説できちんとタイトルがついています(爆)
   少しでもお楽しみいただいたなら幸いです。

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