「ルヴァ様。お話に来ましたー」 栗色の髪の少女――アンジェリーク・コレットはルヴァの執務室へやって来た。 「ルヴァ様?」 執務室に入ったのものの、いつもなら「こんにちは〜。コレット」と聞こえてくるルヴァの声がしない。 コレットは椅子に座るルヴァ近づき、顔を覗き込むとどうやら眠っているらしかった。 「ルヴァ様?」 コレットはもう一度呼んでみたが起きる兆しは見えない。コレットはルヴァの唇に自分の唇を重ねると執務室を後にした。 コレットが出て行ってすぐ、ルヴァはドクドクとなる自分の心音で目を覚ました。 「夢?」 ルヴァはおもむろに指で唇をなぞった。唇にかすかに残る何かが触れた感触。窓から外を見るとコレットがうれしそうに歩いている。 「夢・じゃない?」 ルヴァはもう一度指で唇をなぞると部屋の隅に飾ってある写真に微笑みかけた。写真には公園ではしゃいでいるコレットが写っていた。 次の日 ルヴァは昨日の事が気になりコレットの部屋を訪れた。 『コンコン』ノックをするものの何の物音もしない。かなり早くに私邸を出たにもかかわらず、寝ていたらと思い執務室で時間をつぶしていたのが悪かったらしい。 今から執務室に戻り仕事する気分にもなれず、湖に足を向けた。 誰もいない湖に着くと、ルヴァは流れ行く水に向かい、女王候補たちがするように祈りをささげた。 暫くすると、微かに後ろで足音がした。振り向いたルヴァの目に映ったのはなぜか後ろを向きながら歩いているコレットだった。 ルヴァは嬉しくなりコレットの方へ歩いていこうとした。 しかしコレットの後ろから人の影が見える。誰かと思えばオリヴィエ。前を向いたコレットとルヴァの視線がぶつかった。 ルヴァとコレットは共にかたまり。それに気がついたオリヴィエは「あちゃ〜」と額に手をあて空を仰いだ。 「ルヴァ――」 オリヴィエがコレットと一緒にいる理由を言おうと口を開いたものの、話し終える前に、 「こんにちはコレット。オリヴィエとデートですか〜、お似合いですよ〜」 と、ルヴァが言った。 「あ・あのっ。ルヴァ様…」 コレットも口を開いたものの、 「ごゆっくり〜」 とルヴァが二人の前から立ち去る方が早かった。 「ルヴァ様。待ってっ」 とっさにルヴァを追いかけようとしたコレットの腕をオリヴィエは掴んだ。 「オリヴィエ様。離してください」 コレットは離してくれと腕をブンブンと振り回した。 「落ち着きなコレット。今ルヴァを追いかけてもムダだよ。何を言っても信じやしないさ」 「じゃぁどうしたらいいのですか?このままじゃルヴァ様に誤解されたままに…」 「泣かないで、コレット。んとにルヴァったらこんなに想われているのにそれがわからないなんて鈍感すぎるわ。全く」 オリヴィエは指でコレットの涙を拭き取った。 「ほら、泣き止んで。アンタに涙は似合わないから」 「―――オリヴィエ様」 「さてと。で、相談というのは―――ルヴァの事ね」 オリヴィエが問い掛けるとコレットはコクリと頷いた。 「本当にルヴァったら人の事だと敏感に察するのに自分の事になるとね。よしっ。コレット耳を貸して」 オリヴィエはそう言うとコレットに作戦を耳打ちした。 「そんなので大丈夫ですか?よけいに誤解しないでしょうか?」 「その辺はお・ま・か・せっ!アタシがきっちり話をつけてあげるから☆」 オリヴィエはそう言うとウインクをしてみせた。 |