White Day


謹慎をとかれたランディは溜まっていた仕事を片付けるべく、執務を行っていた。
コンコン
「邪魔するぞ」
ノックの音と同時に執務室のドアが開かれオスカーが入ってきた。
ランディは執務の手を止め、立ち上がると
「この間は無理を言ってすいませんでした」
とオスカーに言付けを頼んだことを謝った。
「別にいいさ。ルヴァもきちんと受け取ったしな」
オスカーはそう言うと
「ただ、やはり意味は知らなかったようだがな、ヒントを与えておいたのでルヴァのことだ、きちんと意味を調べているさ」
と言葉を続けた。
「そうですか。でも意味を知ったところで迷惑だったかもしれないですよね」
ランディが俯きそう言った。
「まぁ、そう悪いように悪いように考えるな。もしかしたらルヴァも喜んでいるかもしれないだろ」
「だったらうれしいですけど……」
「まぁ、どちらにしても、ルヴァは今、惑星調査に出ているからルヴァの気持ちを確認するのは無理だがな」
ランディはルヴァの不在をはじめて聞き、
「いつ頃まで出かけてるのでしょう」
と尋ねてみた。
「俺もはっきりと聞いたわけじゃないんだが、どうも長期のようで一ヶ月とか言ってたと思うぞ」
「そうですか……」
「まぁ、そうがっかりするな。永遠に会えない訳じゃないんだから」
オスカーはそう言うと時計をみ、
「そろそろ俺も執務に戻る事にする。最近サボりすぎでジュリアス様に目をつけられているもんでな」
と言い、出て行った。ランディも席に座ると執務の続きをはじめた。
ルヴァが不在のまま二週間たち・三週間たつ頃、日に日にやせていくランディを見るに見かね、オスカーはルヴァの所へ行く事にした。
ジュリアスに見つからないように、こっそりルヴァが調査に行っている惑星に降り立ったオスカーは、公園でのんびり読書をしているルヴァを見つけた。
「よールヴァ。元気にしているか」
「――オスカー」
突然目の前に現れたオスカーに驚きルヴァは一呼吸置いてから挨拶を返した。
「人が心配して降りてきたらのんびり読書か」
オスカーにそう言われルヴァは慌てて本を閉じると、
「ちょっとした息抜きです。ジュリアスには黙っててくださいね」
と言った。
「もちろん。ジュリアス様にルヴァのことを言ったら、俺がここにいることも言わないといけなくなるので黙っているさ」
「ってことはもしかして申請せずに降りてきたのですか?」
「まぁ、申請したところで、許可は下りないだろうからな」
オスカーはそこまで言うとルヴァの横にこしかけ
「実はランディのことなんだがな」
「ランディに何かあったのですか?」
「まぁ、落ち着け」
今にも立ち上がりそうなルヴァを落ち着かせ
「今のところは大丈夫だが、どうやらルヴァにチョコレートをあげたことをすごく気にしていてな」
「チョコレートをくれたことですか?もしかして私にくれたことを後悔しているのでしょうか?」
「いいや。どちらかというとその逆だな。ところで意味はわかったのか?」
そう尋ねるオスカーにルヴァは顔を赤らめ小さくうなずいた。
「ランディはルヴァが嫌がっているんじゃないかって気にしていてな」
「そんなとんでもない。ランディに想われていることがわかって、すごくうれしかったんです」
ただお礼を言う間もなく惑星調査に出てしまったので私も気にはなっていたんです。どうしたらいいんでしょう」
ルヴァはオスカーに助けを求めた。
「聖地に戻るのはいつだ?」
「このまま行けば3月14日には戻れると思いますが」
そう答えるルヴァに
「丁度いい。実はこの間ランディからルヴァへプレゼントをした日ははバレンタインデーと言う日でな。そのお返しをする日ホワイトデーが丁度一ヵ月後の3月14日になるんだ。その時にルヴァの気持ちを伝えればいいんじゃないか」
「そうですね。そうしてみます。ありがとうオスカー」
ルヴァはお礼を言った。
それからルヴァの惑星調査は順調に進み、なんとか3月13日にはすべての調査を終えた。

次の日の朝。ルヴァは一ヶ月間拠点としていた部屋を片付けると、報告書を手に聖地へ戻った。
荷物を私邸に置きに行くのももどかしく、自分の執務室に荷物を置き、報告書を王立研究院へ持って行った。
王立研究院からの帰り、何かが気になりルヴァは公園に足を踏み入れた。
公園では一組のカップルがベンチで愛を語らっていた。他には誰もいないのかと視線を動かしてみると目の前の噴水の裏側にランディによく似た後姿が目に入った。
ルヴァは噴水の裏側に回ってみると、そこに座っていたのはやはりランディだった。
一ヶ月ぶりに見るランディはオスカーの言うようにどこかやつれていた。
ルヴァがランディの正面に立ってもどこか虚ろな瞳でルヴァに気がつかない。
ルヴァは一瞬悩んでから
「――ランディ」
と声をかけた。
「もうだめだ幻聴や幻覚が見える」
ランディはそんなことを口走り頭を振った。ルヴァは異常を察し、ランディの肩に手を置くと、大きく揺さぶった。
「ランディ。しっかりしてください。ランディ。私です。ルヴァです。幻聴や幻覚じゃありません」
そう叫ぶルヴァの声にようやく焦点が定まったランディは
「ル、ルヴァ様……」
と声を漏らし、急に立ちあがると走り去ってしまった。
「待ってください、ランディ」
ルヴァはランディの背中に声をかけながら後を追いかけた。
ランディが公園を出かけたとき、バランスを崩し足が止まった。
その隙にルヴァはランディに追いつき、まだ走り去ろうとするランディの腕をルヴァは掴み、そのままランディを抱き寄せた。
「ルヴァ様、離してください。お願いですから」
そう懇願するランディにルヴァは
「もう逃げませんか?」
と尋ねた。うなずくランディを見、ルヴァはそっとランディから手を離した。
暫くどちらも口を開かずただ、その場に立ち尽くす。
「あのランディ。聞いてください」
ルヴァはおもむろに口を開くと
「先月のチョコレートありがとうございました」
とまずお礼を言った。逃げ腰になるランディに
「あの。お願いですから逃げないでください」
ランディの腕を再度掴むと下を向き、言葉を続けた。
「あの。貴方からチョコレートを頂けてうれしかったんです。オスカーから受けとった時は正直贈り物の意図を知らなかったので、なぜ貴方からチョコレートを頂けるのか不思議でした。でも意味を調べ、贈り物の意味を知って本当にうれしかったんです。貴方が私と同じ気持ちでいてくれたということが……」
ルヴァはそこまで一気に言い切ると顔を上げた。ルヴァの視界にはビックリした顔のランディが映った。
「で、今日3月14日がこの間ランディがチョコレートをくれた日のお返しをする日らしいのですが、昨日まで報告書を書いていまして……今朝何か買ってから戻ってこようかと思ったのですが、あのですね〜。早く貴方に逢ってお礼と私の気持ちを伝えたかったものですから……」
ルヴァがそう言うと、
「ルヴァ様。俺の気持ちは迷惑じゃないんですか?」
とランディが尋ねた。
「全然。私のほうこそこんな気持ちを貴方に抱いていて良いのか心配だったんです」
「あの。俺うれしいです。本当にうれしいです。勇気を出してプレゼントをしてよかったです」
「貴方は勇気を運ぶ風の守護聖ですよね。私にも貴方のサクリアを少し分けて頂いてもいいですかねぇ〜」
ルヴァはそう言うとそっとランディに口付けをした。


FIN




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   なんとか書きあがりました……。
   毎年恒例のバレンタインデーに続いてのホワイトデーです。
   今回は本当に間に合わないかと思いました。
   これを打ち込んでいるのはルヴァさまが調査を終えた日と同じ日です(苦笑)
   本当に駆け込みで書いたもので、たくさん間違いがあると思います(爆)
   感想・間違い等、メールフォームやBBSにカキコしてもらえるとうれしいです。