Whiteday



「あの〜アンジェリーク教えて頂きたい事があるのですが」
 ルヴァはそう言うとアンジェリークの部屋を訪れた。
「ルヴァ様どうしたのですか?」
 そう言いながらルヴァに席を勧め、お茶を入れた。
 出されたお茶を「ありがとう」と受け取り口の中を湿らすと口を開いた。
「実は明日の事なのですが…」
  ルヴァは視線をテーブルに落とす。
「明日?」
 アンジェリークは壁に掛けているカレンダーを見た。
「あっ。ホワイトデー」
「そうなんです。先月リュミエールにチョコレートを貰った時、あなたがホワイトデーの事を言ってたじゃないですか。で、やはりきちんとお返ししたいのですが、何をしたらいいのかさっぱりで…。教えて頂けたらと思い伺ったのですが、忙しいですか?」
 視線をテーブルからあげるとアンジェリークに目で訴える。
「そうですね。バレンタインのお返しってマシュマロやキャンディ・クッキーがよく言われるけど、どれが本命だったのか覚えてないのです。―――って、本命ですよね」
「え?えぇ」
 ルヴァは顔を真っ赤にしながら頷いた。
「ロザリアに聞いてもいいけど…やっぱり広まるとまずいですしね」
 アンジェリークは腕を組んで考え込んでしまった。
「とりあえず何か手作りのものを返したいのですが…」
「手作りだったらマシュマロやキャンディよりはやっぱりクッキーかな?」
「クッキーですか?」
「えっとちょっと待ってくださいね」
 アンジェリークはそう言うと小さな本棚からお菓子作りの本を出してきた。
「これ、作り方の本です」
 ルヴァは受け取るとページをめくり出した。
 その間にアンジェリークはクッキーをラッピングするための袋やリボンを取りに行った。
一通り揃え、ルヴァの待つ部屋に戻ってくるとちょうど本を見終えた所だった。
「アンジェリーク。この本ちょっとお借りしてもよろしいでしょうかね〜」
「いいですよ。頑張って作ってください。あと、これ差し上げます」
 アンジェリークは先ほどのラッピング用品をルヴァに手渡した。
「頑張ってくださいね、応援していますから」
 ルヴァはアンジェリークに励まされ部屋を後にした。
 私邸に向かう途中。小麦粉やお砂糖そしてアーモンドスライスなどを買って帰った。
 ルヴァはエプロンを引っぱりだし、早速お菓子作りに取り掛かった。
 ココアパウダー入りやアーモンドスライスがのっているもの、型抜きからロッククッキーまで何種類ものクッキーの種を作り、一度も使った事のなかったオーブンを使い焼き上げた。
 出来上がったクッキーを一つ口に掘り込んで見る。 ほんのり甘くちょうどいい焼き上がり。 ルヴァは自分自身びっくりした顔をした。
「こんなにうまくいくと思いませんでした」
 一人でそう呟くと、ラッピング作業に取り掛かった。
バレンタインにチョコレートをくれたのは4人。 ロザリアにマルセル・アンジェリークそして、リュミエール。
もちろん本命はリュミエール。でももらったからには他の人にお返しをあげないわけには行かない。
ルヴァは考え、リュミエールの分だけ特別にメッセージカードをつけることにした。
そして次の日
 ルヴァはまずアンジェリークの部屋へ行き、おかしの本とクッキーを渡し、チョコと本のお礼を言った。
次にロザリアの部屋に行くと留守だった。仕方なくマルセルの執務室へ向かった。
マルセルの部屋にはロザリアもいたので、一緒にクッキーを渡し、お礼を言った。
 最期にリュミエールの執務室を訪ねた。ところが留守である。ルヴァはそのままリュミエールの私邸へ向かった。
 コンコン。ドアをノックするとリュミエールが出てきた。
「――っルヴァ様。いったい…」
 リュミエールはまさかルヴァが訪ねてくるとは思ってもおらずびっくりした。
「今日は貴方に差し上げたいものがありましてね、こちらまで来てしまいました。もしかして迷惑でしたか〜?」
「そ、そんな迷惑だなんて…。もしお時間があるようなら中でお茶でもいかがですか?」
「もし、貴方のお邪魔にならないのならそうさせてもらいます」
「では、どうぞ」
 リュミエールはルヴァを中へ促した。
「ルヴァ様、ハーブティーでよろしいですか?」
「あ〜リュミエールそんな気を使わないでください」
「ちょうど10時のお茶をしようと思っていた所ですので、一緒に飲んでください」
 リュミエールはティーポットとカップ&ソーサーをテーブルの上に置いた。 葉が蒸れるのを待っている間にルヴァは持って来た手作りクッキーを手渡した。
「実は前回のチョコレートのお返しにクッキーを焼いてきたのです」
「これを私に?」
「えぇ、他の人にもチョコレートのお礼に渡しましたが、あなたのは特別ですよ〜」
 開けかけるリュミエールを見てルヴァは、
「今は開けないでください。ほら、ハーブティーも程よく蒸れてますしねっ」
 と言った。リュミエールとルヴァはカップに注がれたTeaを飲んだ。
「おいしい。この葉は何ですか?」
「これはカモミールティーです。もしお気に召したのなら。お分けしましょうか?」
「いえ、いいですよ〜」
 ルヴァは顔の前で手をバタバタとさせた。
「私が入れてもこんなにおいしくならないですもの。貴方が入れるからおいしいのですよ」
「そんなこと…」
「本当ですよ。また貴方の入れたお茶をのませてくださいね〜」
 ルヴァがにっこりと笑うと、リュミエールも 「ぜひまたいらしてください」
 と笑い返した。
「では、今日はこの辺で失礼しますね」
 ルヴァはそう言うと帰って行った。 ルヴァが帰り部屋に一人になったリュミエールはルヴァにもらった箱を開けてみた。
中からたくさんのクッキーとメッセージカードが出てきた。
カードには「誰よりも貴方の事を愛しています」と書いてあった。
そしてその下にルヴァらしく小さく「何だか照れてしまいますねぇ」と書いてあった。



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誰との話に使用か悩みになやんだのですが、
バレンタインをリュミ様にしたので、ホワイトデーはやはりバレンタインのついになる話だろうと思い、
リュミ様とルヴァ様にしてみました。
あいかわらず、なんか中途半端(汗)
とりあえずがんばって早めにアップしてみました。