Christmas

「ルヴァ。いい所であった」
自分の執務室へ戻ろうと聖殿内を歩いていたルヴァは前から歩いてくるクラヴィスに声をかけられた。
「こんにちは〜クラヴィス。私に何か御用ですか?」
そう尋ねるルヴァにクラヴィスは一枚の紙を手渡し、
「後で見てくれ」
と一言だけ告げた。
執務室に戻ったルヴァは早速クラヴィスから貰った紙を開いてみた。
そこには”本日星の瞬く12時に聖殿最上階まで”と書いてあった。
聖殿最上階とは360度ガラス張りの空間である。
ルヴァは12時に向かうため少し仮眠をとることにした。

クラヴィスとの待ち合わせの少し前。ルヴァは聖殿の最上階へ向かった。
ゆったりとした足取りで最上階へ向かい、扉を開けると空間の真ん中に小さな炎を燈したキャンドルの置かれた小さなテーブルが置いてあった。
ルヴァがテーブルの傍らに立ち尽くしどうしたものかと首を傾げていると、
「すまぬ。遅くなった」
とワインとワイングラスを持ったクラヴィスが現われた。
クラヴィスはワインとワイングラスをテーブルの上に置くとそのまま椅子に座る。
いつまでたっても立ちっぱなしのルヴァを少し上目に眺めると、
「いつまでそうしているつもりだ」
と声をかけた。
「そ・そうですね」
ルヴァはそう言うとクラヴィスの前に腰をおろした。
暫くどちらも口を開かない。居心地悪そうにルヴァが身じろぎすると、クラヴィスはおもむろにワインに手を伸ばした。
ポン。コルクの抜ける音が静寂の中に響いた。
クラヴィスはそのままワイングラスにワインを注ぎ、一つをルヴァの前に差し出した。
ルヴァはワイングラスとクラヴィスの顔を交互に眺める。
クラヴィスがワイングラスを持ち上げたのを見、同じように持ち上げてみた。
「Merry Christmas」
クラヴィスはルヴァの持つグラスに軽くグラスをぶつけた。
ワインを一口口に含んだクラヴィスはポケーっとしているルヴァに
「どうかしたか?」
と声をかけた。ルヴァはその声に”はっ”とし、
「い・いえ。別に」
と言いワインを口に運んだ。
「ル・ルヴァ。これはワインだぞ。そんないっぺんに飲んでどうする」
ワイングラスのワインを一息に飲もうとするルヴァをクラヴィスは急いで止めた。
どうもさっきからルヴァには何が起こっているのか理解できていないようである。
「ルヴァ。今日は何の日だか知っているか?」
「今日。ですか?えっと〜。私の誕生日ではないですし、貴方の誕生日でもない。う〜ん」
ワインをテーブルに置き、頭を傾げてみる。
「今日はクリスマスだ」
いつまでたっても答えにたどり着きそうもないルヴァに。痺れを切らし、クラヴィスが答えを言った。
「クリスマスって。あのこの間貴方と一緒に視察に行った宇宙での風習のですか?」
「それ以外に何がある」
「えっ。あれってあの・その恋人同士が一緒に過ごす日と言う…」
「ああ。どうしてもお前と一緒に今年のクリスマスとやらを過ごしてみたかったんだ」
「ええっ!」
さすがのルヴァにも意味はわかったらしく、ワインに手を伸ばしてみたり、俯いてみたりと、落ち着きなく動き出した。
そんなルヴァの一連の動作をクラヴィスはうれしそうに眺める。
「あ・あの。クラヴィス」
さすがにクラヴィスの視線に気づいたルヴァは声をかけた。
「なんだ?」
「そんなまじまじと私の顔を見ないでください」
照れてなのかワインの所為なのか、ルヴァの頬がほんのり紅く染まっている。
そんな顔をすればするほどクラヴィスにはたまらなく可愛く見えてしまう。
「ルヴァ」
「な・なんですか?」
クラヴィスはびくついているルヴァを見、少し笑うと
「上を見てみろ」
と声をかける。
ルヴァは恐る恐る天井を見上げてみた。
そこには満天の星空。
「うわ〜きれいですね〜」
さすがのルヴァも口から感嘆の声が漏れた。
「今日は一段と寒いらしい。空気が澄んでて星が良く見える」
子どものようにいつまでも空を見上げているルヴァをそのままにクラヴィスはそっと席を立つ。
そのままルヴァの背後に回り、後ろから抱き込んだ。
びっくりしたルヴァは後ろを振り向こうとした。
そんなルヴァをクラヴィスは
「そのままで」
と制し、言葉を続けた。
「ルヴァ。正直に答えてくれ。今日という日に私と過ごしたのは嫌だったか?」
フルフルと首を振るルヴァ。
「実は・・・。私もこの間の視察の時にクリスマスの話を聞き、貴方と過ごしたいと思っていたんです。でも肝心なその日を忘れているようじゃダメですよね」
そう言い、ルヴァはクラヴィスの方に振り向いた。
「だからクラヴィス。お礼を言わせてください」
ルヴァはそこで一度言葉を区切ると、
「素敵な時間をありがとう」
と言い、微笑んだ。
クラヴィスを見つめ心からお礼を言うルヴァにクラヴィスはそっと唇を合わせた。


FIN



     今年のクリスマスは、とりあえず現守護聖全員書いたということで最初に戻りクラヴィスさま。
     というのと、友達からぜひ今度はイベント物でクラヴィスさま書いてと言われて書きました。
     実は今回の話、めずらしく一ヶ月前に書き上げていたもの。
     いつもなら書いたあとに何度も読み返し、友達まで使って推敲をするのですが、
     友達にもクリスマスのお楽しみと言うことで読ませていません。
     なんだかこの言葉おかしいぞ?と思われた方はメールをください。
     きっと標準語になっていないのでしょう。早急に修正します。

     三度目のクリスマスはこんな感じになりました。少しでも楽しんでいただければ幸いです。
     よろしければBBSまたはMAILにて感想など頂けるととってもうれしいです。
   




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