st.valentine’s day


「ランディ。今日の稽古はこのあたりにしておこうか」
「はい。オスカー様。ありがとうございました」
 さわやかに礼を述べるランディにオスカーは剣をしまいつつ
「ところで、ちょっとだけいいか?」
 と声をかけた。
「はい。もちろんです」
 ランディはそう応えると剣を鞘に収めた。
二人は木陰に腰を降ろすと、
「ランディ。好きなやつがいるだろう」
 とオスカーはおもむろに問いかけた。
 ランディは「え?」と焦ってオスカーの方を見た。
「隠さなくても俺にはわかる。で、恋するお前に良いことを教えてやろうと」
 オスカーはそこで一度言葉を区切ると
「とある惑星にバレンタインという風習があるんだ」
「バレンタイン、ですか?」
「ああ、どうやら惑星の中でも国にとって微妙に違いはあるのだが、
どこの国にも共通しているのが2月14日に好きな人に贈り物をするということ。
もちろん。その贈り物に気持ちを乗せてだがな」
「気持ちを乗せての贈り物ですか」
「そうだ。好きだと言う気持ちを乗せて相手に贈り物をする。素敵なことだと思わないか」
 熱心に説明するオスカーにランディは
「素敵なことを教えてくださってありがとうございます。でも何を贈ったら良いのでしょう?」
 と聞いてみた。
「さっきも言ったが、国によっていろいろでな。
花を渡す国もあれば、チョコレートというお菓子を渡す国もあるみたいだな」
「チョコレート?気になりますね。ちょっと調べてみます。本当にありがとうございました」
 ランディはそう言うと立ち上がり
「では。失礼します」
 と去っていった。
 残されたオスカーは「若いっていいな…」と年寄りくさいことをつぶやいた。

次の日。下界への視察が入っていたランディはさっさと仕事を終わらすと、
チョコレートなるものを探しに街の中を歩くことにした。
「どこに行ったらあるのかな?」
 そうつぶやきながら街を歩くと、すぐにワゴンに乗ったチョコレートが目に入ってきた。
「これがチョコレート」
 いろいろな種類のチョコレートを見て、ランディは早速あげるためのチョコレートを探し始めた。
「えっと。あの人のイメージは……」
 いくつものチョコレートを手にしてはイメージにあったチョコレートを探した。
 ようやくみつけたチョコレートを購入すると、ついでにメッセージカードもつけ、聖地へ戻った。



2月14日 早朝
 ランディは想い人の所へ行き、ドアの前にメッセージつきのチョコレートを置いた。
 ドアの前にある荷物に気づいた彼は自分宛のものであると確認すると中身を見た。
 そこには『st.valentine’s dayチョコと一緒に俺の気持ちを贈ります。 ランディ』
と書かれたメッセージカードときれいにラッピングされたチョコレートが入っていた。
 彼は意図がわからず、尋ねようとランディの執務室へ向かった。が、あいにくランディは留守だった。
 オスカーと剣の稽古でもしているのかと探したが、どこにもランディの姿が見えない。
 聖地内をうろうろしているとオスカーに出会った。
「あ。オスカー。ちょうど良いところで。ランディを見かけませんでしたか?」
「ランディなら、確か今日の早朝から下界での長期視察が入っていたと…」
 思うが。と、言葉を続けようとするオスカーに
「そうですか」
 と肩を落としながら一言つぶやくと彼は贈り物の意図を調べるためにオスカーの前を立ち去った。


Be continue…


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   毎回ですが、ホワイトデーに続きます。
   紙媒体に書いていると長そうだったのですが、
   打ち込みをすると短かった…ごめんなさいm(_ _)m