HAPPY BIRTHEDAY


「さて、今日も一日がんばりましょうかねぇ〜」
ルヴァは執務室に向かいながらつぶやいた。
「あれ?あれはなんでしょう?」
ルヴァの目に入ってきたのはルヴァの執務室のドアにかけられた一つの袋。
袋には「ルヴァ様へ」とだけ書かれたメモが付いていた。
ルヴァは袋を手に執務室に入ると応接セットの上に袋を置くと、中身を確認してみた。
中から出てきたのはどうやら藍色の衣類のようなもの。何に使うのかわからない帯。しかしどうしたらいいものなのかがわからない。
ごそごそ袋を見ていると、この服の着方らしき紙と封筒が出てきた。
封筒を開けるとそこには【本日同封した服を着て17時半公園へ来てください】と書いてあった。
「この服を着るのですか…」
ルヴァはつぶやくと着方の載っている紙を広げた、そこには【浴衣の着方】と書いてあった。
服の上から紙に載っている様に見よう見まねで羽織ってみた。
最初はなかなかうまくいかなかった着付けも何度か着ているうちに形になるようになってきた。
「こんなもんでしょうかね」
ルヴァはそう口にすると浴衣をソファーにおいて仕事に取り掛かった。
いつもならお茶の時間を見計らって現れるオリヴィエやリュミエールも特に訪れず、
執務の途中で飽きて遊びだすゼフェルを注意するマルセルの声も聞こえてこず、
平和に一日の業務が終わっていった。

17時を回ったころ、ルヴァは業務の片づけをし、服を浴衣に着替えた。
「公園に来てほしいと書いてありましたね」
ルヴァはそういうと公園に足を運んだ。
「これは何でしょう?」
公園に着いたルヴァの目に入ってきたのはいくつものテント。
そのテントの下では守護聖がルヴァと同じような服を着ていろいろなものを作っていた。
「あの〜、ジュリアス、オスカー。あなたたちは何をしているのですか?」
「よく来たな。ルヴァ。今宵はルヴァのために焼きそばとかいうものを作っている」
「焼きそばですか?」
「あー。ソース味でなかなかうまいぞ。しかもジュリアス様が作っているし、不味いわけがない」
「そうですか。また後でお邪魔しますね」
ルヴァはそういうとそそくさと二人の前から立ち去った。
公園の中をうろうろしていると次に目に入ってきたのはランディとゼフェルのいるテントだった。
「こんにちはランディ。ゼフェル。あなたたちは何をしているのですか?」
「やっと来たな。見たらわかるだろ、綿菓子ってやつを作ってんだ。この装置は俺が作ったんだぜ」
「よく言うよ、部品はほとんどもらってきたくせにさ」
「うっせーなー。組み立てたんだから俺が作ったに決まってるだろ」
喧嘩を始めた二人をなだめ、ルヴァは他へ足を向けた。
次に見えてきたテントではリュミエールとクラヴィスがテントの下に座っていた。
テントの中には小さなテーブルが一つあるだけだった。
「こんにちはルヴァ様」
近寄っていくルヴァにリュミエールが声をかけてきた。
「こんにちは、リュミエール。クラヴィス。あなたたちはここで何をしているのですか?」
「ここは、占いの館だ」
「占い・・・ですか」
「あぁ。悩みがあるなら言ってみろ」
「悩み・・・」
ルヴァはしばらく考え込むと
「特にないですね」
と言い、別の場所へ向かった。
最後に現れたテントには今までの守護聖が来ていたものと違ってとても派手な服を来たオリヴィエとかわいい柄の入った服を着ているマルセルがいた。
「こんにちは。オリヴィエ。マルセル。あなたたちの服は私たちが着ているものと違いますね」
「あんたたちが着ているのは男物の浴衣だからおとなしい色や柄になるのよ。で、アタシが着ているのが女物の浴衣。いろんなのがあって迷ったわ〜。マルセルが着ているのは女児用の浴衣ね。だからかわいい感じなの」
「オリヴィエさま。オリヴィエさまが女物の浴衣を着るのは自由ですが、どうして僕までこんなのなんですか。ゼフェルやランディはちゃんと男物ですよね」
「なんでってもちろん似合うからに決まってるじゃない」
「そんなのひどすぎます〜」
文句を言うマルセルを無視し、オリヴィエはルヴァに
「テントのお店はここで終わり。ルヴァは奥のカフェテリアに向かってね。アタシたちも向かうから」
ルヴァはそう言われ、奥のカフェテリアに向かった。
カフェテリアのドアを開けると【パンパンパン】とクラッカーが鳴った。
『ルヴァ。お誕生日おめでと〜』
何のことかわからずボーっとしているルヴァに、後ろからやってきたオリヴィエが
「ほら、そんなところに立ってないで中に入って」
と中へ促した。
カフェテリアの真ん中に集められた机の上にたくさんの料理が乗っていた。
「はい。ルヴァさま」
マルセルはルヴァの隣からお皿とフォークを差し出した。
「何をぼーとしておる。今日の主役のルヴァが手をつけないと他の人が手をつけれないではないか」
クラヴィスにそう言われルヴァはお皿に料理を取った。
「あの〜。一つ聞いても良いですか?」
ルヴァはみんなの顔を見わたし、
「私が主役ってどういうことですか?」
と尋ねた。
「まじかよ…」
ゼフェルはそう言うと、
「ルヴァ。今日は何月何日だ?」
「7月12日ですよね」
「あぁ、そうだ。で今日は何の日だ?」
「―――」
ルヴァは暫く考え、
「あ〜。私の誕生日ですね」
とつぶやいた。
「ようやく思い出したわね。何の日か思い出してもらえないとここまでやっても意味がないからね」
「これはオリヴィエが考えてくれたのですか?」
「そうよ。視察に行った惑星で見たこの衣装をどーしても着たくてね」
「何だよ俺らはそのためにこれ着せられたのかよ」
「ゼフェルはいいじゃない。僕なんて…」
「マルセルお似合いですよ」
「ルヴァさま。それはほめ言葉じゃないです」
頬を膨らますマルセルを見、ルヴァは微笑むとみんなの顔を見渡し
「今日は、本当にありがとうございました」
とお礼を述べた。

FIN

 今年のコンセプトは『浴衣』ということでがんばりました。
  なぜ浴衣かというとルヴァ様の誕生日の前日・前々日に行われるアラモ4の影響です。
  コンセプトを作るとかなり書きにくかったです。
  しかもどう考えても似合ってない人が何人か…。
  少しでもお楽しみいただけたなら幸いです。


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