WHITE DAY

ゼフェルから謎なプレゼントをもらってから迎えた月の曜日。
ルヴァは湯飲み形のチョコレートを持って執務室へ行くと、執務机の隅に置いた。
「でもこんな形のチョコレートがあるなんて、びっくりです。
ゼフェルが戻って来たらお礼を言ってプレゼントの意味も聞いてみましょう」
チョコレートを見ながらそうつぶやいた。

結局予定より一週間遅れでゼフェルは聖地に戻ってきた。
「う〜ん。久しぶりの聖地だぜ。調査報告もエルンストんとことジュリアスのところに出してきたし、今日は帰るか」
ゼフェルはそう言うと聖殿を後にした。
「ゼフェル〜」
私邸に向って歩いていると後ろからゼフェルを呼ぶ声がした。
振り向くと聖殿の窓から手を振るルヴァの姿が見えた。
「っだよ。出来れば暫く顔を合わしたくなかったのによ」
そんなゼフェルの気持ちなど知らずにルヴァは
「今からお茶にするのですが、一緒にいかがですか〜」
と叫んだ。
「ったく、恥ずかしい奴だな」
ゼフェルはそうつぶやくと
「わかったから叫ぶな」
とだけルヴァに答え、聖殿に戻った。

ルヴァの執務室のドアを開けるとちょうどお茶を入れ終わったところだった。
ゼフェルはカップの置かれた前に座ると室内を見渡した。
すると視界の隅に見覚えのあるものが…
「おい、ルヴァ」
「なんですか〜?」
自分の分のお茶も入れ、ゼフェルの前に座ったルヴァは答えた。
「何であれを飾ってるんだ」
「あれ。ですか?」
ルヴァはなんなことだかわからずに首を傾げる。
ゼフェルはもう一度「あれ」と言いながら湯飲み形のチョコレートを指差した。
「あ〜貴方からのプレゼントですね。なんだか食べるのがもったいなくて」
ルヴァはお茶を一口飲むと
「そうそう。貴方にプレゼントの意味を聞こうと思って」
と言葉を続けた。
「…っ」
ゼフェルは意味など伝えられるわけもなく、一瞬言葉を詰まらせると
「なんでもねーよ」
とそっぽを向いた。
「そうなんですか〜?」
ルヴァは納得がいかないと思いながらもそれ以上追求するのはやめた。
結局その日は二人でのんびりお茶をして過ごした。

ゼフェルからのプレゼントの意味がわからないまま、一月近く経とうとしていた。

「やっほ〜ルヴァ。最近お邪魔してないしそろそろお茶でもご馳走になろうと思うんだけど」
「久しぶりですね。オリヴィエ。忙しかったのですか?」
「そうなのよ。大きな事は起こってないんだけどね、なんかね細々仕事が多くって」
そう言うとオリヴィエはルヴァの執務室に入ってきた。
「今お茶を入れますから暫くお待ちくださいね〜」
オリヴィエにそう言うとルヴァはお茶を入れるために立ちあがった。
その様子を見ていたオリヴィエは執務机の上にあるチョコレートに気がついた。
「今日はリュミエールにいただいたハーブティにしてみました。リラックス効果があるんですよ〜」
そう言い、オリヴィエの前にカップを置くと自分もオリヴィエの前に座り、カップに口をつけた。
オリヴィエもお茶を一口飲むと
「このお茶おいしいわね」
と言い「ところで」と言葉を続けた。
「あの机の上にあるチョコレートは何?」
「あれですか?先月ゼフェルにいただいたものなんです。なんだかゼフェルの気持ちらしいのですが、私にはなんのことだか…」
と言った。
「ふ〜ん。ゼフェルの気持ちね。なかなか粋なことするじゃない」
オリヴィエはそうつぶやいた。
「貴方には意味がわかりますか?ゼフェルに聞いても教えてくれなくて」
ルヴァが困った顔をすると
「まぁゼフェルに聞いて教えてはくれないだろうね。仕方がないから私が教えてあげる」
「本当ですか?ありがとうございます」
「お礼を言うのは早いよ。今から私の質問に答えて」
オリヴィエはそう言うと
「単刀直入に聞くわね。あんたはゼフェルの事をどう思っている?」
ルヴァは一瞬顔を赤らめると
「どうって言われても…あのですね…」
と言い、下を向いてしまった。
「ゼフェルのこと嫌い?」
オリヴィエが聞くと
ルヴァは顔を上げるとすごい勢いで
「とんでもない。ゼフェルのことを愛しく思うことはあっても嫌うだなんてありえないです」
と言った。そして何を口走ってしまったのかと思い。
「あ、あの…」
とまた下を向いてしまった。そんなルヴァを見、オリヴィエは
「ようはそう言うこと」
と言った。
「そう言うこと?」
ルヴァは顔を上げると
「そう。先月ゼフェルがプレゼントをくれた気持ちと言うのは今あんたがゼフェルのことを思っている気持ちと同じなんだよ」
「そんな…。ありえないです」
「ま、あんたが信じられないのなら14日にゼフェルにプレゼントをあげな。そしたらはっきりするよ」
オリヴィエはそう言うとカップに残っていたお茶を飲み干し、自分の執務室へと戻っていった。

オリヴィエの言っていたことが気になりつつ、気がつけば13日になっていた。
「とうとう明日が14日土の曜日。ゼフェルに何かプレゼントをしたほうが良いのでしょうか?」
ルヴァは執務室の中を落ち着きなくうろうろしていた。
「ゼフェルの気持ちはどうであれ、やはりチョコレートをいただいたと言うことに対してお礼は必要ですね」
ルヴァはそう思い、ゼフェルへのプレゼントを買いに出かけた。
行ったお店にはなぜか男の人がたくさんいた。
「いったい何があるのでしょう」
お店を覗くとたくさんのクッキーや飴などが並んでいた。
ルヴァはその中からクッキーの詰め合わせを買った。

次の日。
きれいにラッピングされたクッキーを手にルヴァはゼフェルの私邸へ行った。
呼び鈴を鳴らすとゼフェルが出てきた。
「ルヴァが俺の私邸に来るなんてめずらしいな。今日はみんないないから何のもてなしもできねーけど良かったらあがるか?」
玄関口でゼフェルはそう言うとルヴァに中を進めた。
ルヴァは暫く考え、
「今日は渡したいものがあるだけなので」
と言い、クッキーの包みを渡した。包みを受け取ったゼフェルは
「これは?」
と聞いた。
「あのですね。先月の貴方のプレゼントの意味と言うのはわからないままなのですが…。
気持ちを伝えるならプレゼントを渡しなさいってオリヴィエに言われて…。私の気持ちです」
ルヴァはそう言うと
「では、お休みのところすいませんでした」
と頭を下げ帰ろうと後ろを向いた。
「待てよ。言いたいことだけ言って帰ろうとするんじゃねーよ」
ゼフェルはそう言い、後ろからルヴァを抱きしめた。
「…っ」
ルヴァは言葉にならない声を出し、身体を硬くした。
「ルヴァってじこちゅーのとこあるよな。自分のことだけで、人の事考えてねーだろ」
ゼフェルはそう言うとルヴァを自分の方に向かせ、
オリヴィエに何を言われたかしんねーけどよ。俺はルヴァのことが好きなんだ」
「ホント、に?」
ルヴァはあいかわらず信じられないと言う顔をしてゼフェルを見る。
「あぁ。本当だ。だからルヴァの気持ちも聞きたい。嫌いなら嫌いでもいい。本当の気持ちを…」
「そんな。私が貴方を嫌うはずがないじゃないですか…。私は貴方を、愛しく思っていまっ」
そこまで伝えるとルヴァの口はゼフェルの口によってふさがれていた。
長い長いキスの後二人はゼフェルの私邸へと入っていった。


fin



  バレンタインは余裕をもって書いていたのですが、
  ホワイトデーはそしてまとまらないまま放置…(爆)
  一人芝居だったバレンタインに比べて今回はちゃんと一緒にいてた、はず。
  あいかわらず面倒見の良いオリヴィエ様です。

  感想など聞かせていただけるとうれしいです。

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