HAPPY BIRTHDAY

アンジェリークは12日の約束を取り付けたくてルヴァの執務室へ向った。
コンコン。
ノックをするものの、中から応えの声がしない。
「今日もルヴァ様はいらっしゃらないのね」
何度目になるかわからない言葉を無意識のうちに口にするとアンジェは歩き出した。
「よぉ。アンジェリーク。ため息なんてついてどうしたんだ?」
「ゼフェル様。こんにちは。ゼフェル様ならご存知かしら?」
「ん?」
「最近ルヴァ様をお見かけしないのですが、どこか視察にでも行かれているのでしょうか?」
「ルヴァ?あー。あいつなら数日前から風邪で寝込んでいるらしいぜ」
「風邪ですか!?大丈夫なのかしら?」
「あいつのことだから大丈夫だろ。そろそろ治って仕事にも来るんじゃないか?」
「そうですか。ありがとうございます」
アンジェリークはお礼を言うと聖殿を後にした。

ルヴァ様の私邸にお見舞いに行こうかしら?でも…

アンジェリークは悩みながらもゼフェルのそろそろ治るかもと言う言葉を信じ、毎日ルヴァの執務室に足を運んだ。


11日。
とうとうルヴァの誕生日が明日に迫った。
しかし、あいかわらずルヴァは執務にやってこない。
アンジェリークはとうとう食料を買い、ルヴァの私邸に向った。
執事に通されルヴァの寝室に行くと、ベッドに横になるルヴァの姿が目に入った。
「ルヴァ様大丈夫ですか?」
アンジェリークはルヴァの傍らで声をかけた。
「ア、アンジェリーク。どうしてここに?」
「ずっと明日の約束をしたくて執務に来られるのを待っていたのですが、なかなか来られなかったので…」
「心配をかけましたね」
身体を起こそうとするルヴァをアンジェリークは止めた。
「すいません。風邪をこじらせてしまったようで」
「ルヴァ様ちゃんと食べてますか?」
「そ、それは…。食欲もなくてですねー」
しどろもどろに言い訳をするルヴァに
「ダメですよ。食べないと良くなるものも良くなりません」
アンジェリークは言葉を切ると
「ルヴァ様キッチンお借りします」
そう言うとアンジェリークはキッチンへ行った。
ルヴァはベッドの上で身体を起こしキッチンの方を微笑みながら眺めていた。
暫くするとキッチンから『ガチャン』という物音がしてきた。
ルヴァは心配になり、ベッドから降りるとキッチンに足を運んだ。
キッチンではおじやを作ろうとしてくれているのかいくつかの野菜のみじん切りが見えた。
「あ、あの。アンジェリーク」
恐る恐る声をかけると
「すいません。大きな音を立ててしまって…。
おなべ落としてしまっただけなのでルヴァ様は気にせず寝ててください」
そう言ってアンジェリークは調理を再開した。
ルヴァは仕方なくベッドに戻り、食事が出来るのを待つことにした。
「ルヴァ様できましたよ」
ベッドで横になっているうちに寝てしまっていたのかルヴァはアンジェリークの声で目を開けた。
開いた目の前にはお盆に乗せられたおじやとれんげ。そして心配そうな表情のアンジェリークの顔があった。
「ありがとう」
ルヴァは身体を起こし、アンジェリークにお礼を言うとお盆を受け取り、おじやを一口口に含んだ。
ほどよい熱さのおじやは塩加減もちょうど良くとても美味しかった。
「アンジェリーク。とても美味しいです」
ルヴァの感想を待つようにじっとルヴァを見ていたアンジェリークもルヴァの感想を聞けてほっと胸をなでおろすと
「よかった。私お料理苦手だから心配だったんです」
そう言うと
「おかわりもありますので言ってくださいね」
と言い、ルヴァのベッドの傍らに腰を下ろした。
ルヴァはお盆をベッドサイドに置くとアンジェリークのために椅子を取りに行こうとした。
「ここでいいです。ここでルヴァ様のお顔を拝見していたいんです」
アンジェリークはそう言いルヴァの動きを止めた。
ルヴァは頬を紅く染めると照れ隠しのようにおじやをほおばった。
しばらく不思議な空気が流れたものの、ルヴァが手にする器の中身がなくなるころには
アンジェリークとルヴァは普通に会話を交わしていた。
「アンジェリーク。ごちそうさまでした。久しぶりに食事をしました。
おかげで身体も楽になりました」
ルヴァはそう微笑むと
「この調子なら明日には風邪も治ってそうです」
と言葉を続けた。
アンジェリークは明日という言葉に当初の目的を思い出すと
「あの、ルヴァ様。明日なのですが、私と一緒に過ごしてもらえませんか?」
と訊ねた。
「明日ですか?そうですね。今日のお礼もかねて明日は貴方とゆっくりしましょうか」
明日が自分の誕生日だということを全く覚えていないルヴァはそう答えた。

12日、誕生日当日。
ルヴァの身体のことも考え、二人はルヴァの私邸で過ごす事にした。
アンジェリークはルヴァへのプレゼントを手に私邸へ向った。
今日は昨日とは違い執事に応接間に通された。
アンジェリークが応接間に入るとそこにはすっかり体調の良くなったルヴァがお茶のセットをして待っていた。
「あの。ルヴァ様。これ」
アンジェリークが包みを渡すとルヴァは「これは?」と首をかしげながら受け取った。
「今日ルヴァ様のお誕生日ですよね」
アンジェリークは
「気に入っていただけるかわかりませんが誕生日のプレゼントです」
と言葉を続けた。
「あ。そういえば今日は私の誕生日でしたね。すっかり忘れていました。
覚えていてくれてありがとう。アンジェリーク」
ルヴァは心からアンジェリークにお礼を言うと二人は素敵な一日を過ごしました。

FIN


      なんだか収拾がつかなくなってしまいました(汗)
     今年のルヴァ様の誕生日は私は聖地に行っているため、
     誕生日よりも前をメインに書きました。
     誕生日当日二人がどんな一日を過ごしたのか。
     それは皆さんの想像にお任せします(苦笑


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