Happy Birthday



「あなたってルヴァ様のことが好きなのね」
「え?い・いきなり何を…」

 何度目かの謁見の日。
 謁見に行った帰りに、アンジェリークの隣を歩くロザリアが口を開いた。
 いきなりの的を射たセリフにアンジェリークはどきどきしながら返事をした。

「シラを切っても無駄よ。あなたを見てたらわかるんだから」
 アンジェリークは何でそんなに自信満々に言われているのかわからず首を傾げた。
「今日の謁見でもそう。あなた守護聖様方の評判が私に負けているというのに、
 ルヴァ様があなたの方が女王にふさわしいっておっしゃったら、すごくうれしそうな顔をするじゃない。
普段からもルヴァ様のところに通っているし、聖殿内でルヴァ様を見かけるたびにうれしそうな顔をしているし」
ロザリアはそこまで言うと、
「だからあなたがルヴァ様のことが好きだってわかったの」
 と言い切った。
 アンジェリークはどう反応してよいのか悩み、
「もしかしてあきれちゃった?あなたのライバルが私みたいなので」
 と聞いた。
「何をいまさら。最初からあなたをライバルなんて思ってなくてよ」
 ロザリアはそういうとアンジェリークの顔を見た。
 アンジェリークは”ばらすの?”という顔でロザリアを見ている。
 ロザリアは一つため息をつくと
「別に私から他の方々にあなたがルヴァ様のことを好きだってばらそうなんて思ってないから心配しないで。
私はあなたの恋を応援しているから」

「こんにちは、オスカー様。今日はルヴァ様のことについて教えてください」
 ロザリアはもう何度目になるかわからない質問をオスカーにしていた。
「ルヴァについてか。ルヴァがうらやましいな」
「何の事でしょう?」
 首を傾げるロザリアに
「最近噂になってるんだ。お譲ちゃんが、いろんな奴にルヴァについて聞きまわってるってな」
「え?」
「もしかして噂に気付いてなかったのか?多分当事者のルヴァ以外はみんな知っているぞ。
そういう事でオレから伝えられる事はもうないな…」
 オスカーは手を顎に持っていき、
「強いて伝えるとなら、すでに知っているかもしれないが、ルヴァの誕生日が7月の12日だってことくらいかな。
じゃ、応援してるからな」
 ロザリアはオスカーのセリフを聞き、逃げるようにオスカーの執務室を後にした。

 私がルヴァ様のことを気にしている。いつの間にそんな噂が…。
アンジェリークの耳に入る前になんとかしなくては。
 ロザリアは速足で聖殿を出るとそのままアンジェリークの部屋へと向かった。
「アンジェリーク、アンジェリーク」
 呼び鈴を鳴らすものの、アンジェリークが部屋から出てくる気配はない。
 ロザリアは仕方なく帰ってきたら部屋に来てちょうだいと手紙を記し、ドアの間にはさんだ。

「ロザリアいる?」
 アンジェリークはロザリアの部屋のドアをノックした。
ドアが開き中からロザリアが出てきた。
「今戻って来たんだけど、何か用?」
「やっと帰って来たわね。ところでアンジェリーク。何か私の噂聞いてる?」
「噂?そんなの知らないよ。何かあるの?」
「知らないならそれでいいわ。じゃ、コレ」
「何?このノート」
「ルヴァ様データノートよ。いろいろ誤解を受けながら集めたんだから役立ててよね。
じゃぁ、用はそれだけだから」
 ロザリアは一方的にノートをアンジェリークに手渡すと部屋のドアを閉めた。
 アンジェリークは部屋に戻り早速ロザリアからもらったノートを開いてみた。
(すごい、こんなにルヴァ様について調べてくれたんだ。あっ。もうすぐ誕生日なのね。
何かプレゼントを買ってお渡ししよっと)
 アンジェリークは何を買おうか考えた。
(そういえば、最近たくさんの本を一度に調べることが多くて栞が足りないって言っていたわ)
 アンジェリークはルヴァの為に押し花の栞セットを買った。

 誕生日当日
「さて、ルヴァ様にお渡しするプレゼントも持った」
 アンジェリークは気合を入れてルヴァの執務室へと向かった。
執務室の前まで来ると部屋の中からオスカーの声がしてきた。
(オスカー様が来られているのね。お話が終わるまでここで待ってよっと)
 アンジェリークは執務室の前で話が終わるのを待つことにした。
 特に話を聞こうと思っていたわけではないのだが、自然とアンジェリークの耳に話が入ってくる。
「ところで、最近ロザリアがルヴァのことについて聞きまわっていたが、何かあったか?」
「何か…とは?」
「決まってるだろう。あれだけルヴァのことを聞き歩いていたんだ、絶対ルヴァに気があるぞ」
「え?」
 アンジェリークの耳に入ってきたロザリアがルヴァ様に気があると言うオスカーのセリフ。
 アンジェリークは手にしていたプレゼントを執務室前に落とし、自分の部屋へと走って帰った。
「ロザリアのことですか。あれは誤解なんですよ。
ロザリア本人からはっきり私のことは好きではないと言われましたからね」
「そうか。じゃぁ、なんであんなにルヴァのことを聞きまわっていたんだ?」
「さ〜。何ででしょう。少なくともロザリアが私のことを好きだったり、
私がロザリアのことを好きだったりすることはないですね」
「そ、そうか」
 微笑みながらロザリアのことは好きでないというルヴァに圧倒されつつ、
 オスカーは自分の執務室に戻るために、ルヴァの執務室のドアを開けた。
「ん?」
 オスカーは廊下に落ちている袋を持ち上げると、
「ルヴァ。このようなものが落ちていたが」
 と袋をルヴァに手渡した。
「いったいなんでしょうか?」
 ルヴァは袋を開け中に入っていた二つ折りのメッセージカードを開いた。
「これは…。オスカー失礼します」
 ルヴァは慌てふためいて自分の執務室を出ると、そのまま聖殿の出入り口に向かった。
「いったいなんだ?」
 オスカーは首を傾げるものの自分の執務室へと向かった。

 ルヴァは聖殿を出るとそのままアンジェリークの部屋へと走っていった。
「アンジェリーク・アンジェリーク」
 アンジェリークの部屋のドアを力任せにたたくルヴァ。
 アンジェリークは暫く居留守をつかっていたものの。根負けし、ドアを開いた。
「アンジェリーク。聞いてください」
 ルヴァがそういう物の、アンジェリークは手で耳を押さえた。
 ルヴァは手にしていた袋を足元に置くと、アンジェリークの腕をつかみ、耳から話した。
「お願いします。私の話を聞いてください。ロザリアとは何でもないんです。
万が一ロザリアが私のことを好いてくれていたとしても、私が好きなのは他の誰でもありません。
アンジェリーク。貴方なのです」
 ルヴァはアンジェリークがもう耳をふさがないことを察し、腕を放すと、足元に置いた袋を取り、
「アンジェリーク。私は貴方のことが好きです。栞が足りないって言った言葉覚えていてくれてありがとうございます」
 ルヴァはふわりと微笑み、
「いつまでも私の傍らで微笑んでいてもらえませんか?」
 と尋ねた。
 アンジェリークは一筋の涙を流しうなずいた。
「ルヴァ様お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう。アンジェリーク。今年は今までで一番素敵な誕生日になりました」
 ルヴァはそう言うとそっとアンジェリークの額に唇を落とした。
 

F I N



今年も何とかアップする事が出来ました。
今回は書きあがったのが誕生日の前日という状態のため、
推敲が全くと言っていいほど出来ておりません。
そして別に誕生日じゃなくてもいいやん。
というつっこみもありますが、目をつぶっていただけると助かります。

感想などメール掲示板web拍手等でいただけるとすごくうれしいです

最後までお付き合いありがとうございました。




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