White Day

「ちょっと、ルヴァ。ルーヴァ」
 言葉をかけてもぼーっと別の世界に行ってるルヴァの肩を少し強めに揺すってみる。
「あっ。オリヴィエ」
 ようやく焦点のあったルヴァは自分がずっと呼ばれていたことに気がついた。
「あっ。じゃないわよ。最近どうしたのよ。ぼーっとしてるのはいつものことだけど、惑星から帰ってきてから特におかしいわよ」
 さらりと失礼なことを言ったオリヴィエにルヴァは暫く考え、オスカーの行動について相談してみることにした。

「ふ〜ん。そんなことがあったんだ。で、あんたはオスカーのことどう思ってるのよ」
「どうって…。それが自分でもわからないから困ってるんです。もちろん嫌いではないです。ただ、オスカーが私を想っているのと同じ気持ちかと言われたらわからないんです」
 ルヴァはオリヴィエに正直に自分の今の気持ちを伝えた。
「そっか。まぁそんなに急いで答えを出さなくてもいいんじゃない?あんまり思いつめて執務に影響を与えるようなら困るけどね。じゃアタシはそろそろ自分の執務室に戻るね☆」
 オリヴィエはそう言うと自分の執務室に戻っていった。
 ルヴァは目の前にあるティーセットを片付けるために立ち上がった。

次の日、またしても守護聖に緊急集合がかかった。今度は炎のサクリアが暴走しているとのこと。オスカーは補佐にリュミエールを引き連れサクリアの暴走を抑えるために出かけた。
ルヴァはあいかわらずもやもやした気持ちのまま執務をこなしていた。しかし帰省予定日になっても戻ってこないオスカーのことが気になるのか普段ならあり得ないミスを連発し、気分転換に公園へ足を運ぶことにした。
公園ではいつものようにチャーリーが店を構えていた。
「こんにちは。ルヴァ様。なんだか浮かない顔してますけどどうかしましたか?」
「こんにちは、チャーリー。どうも最近集中力が無いみたいで、執務をしていてもなんだかミスが多いんですよ〜」
 チャーリーはそう答えるルヴァの顔を見て、
「なんだか今のルヴァ様のお顔拝見していると半月ほど前のオスカー様を思い出しますわ」
 と言った。
「オスカー。ですか?」
「はい。なんでも恋の悩みがあったようで、ものすごく思いつめた顔してはったんです」
チャーリーの言葉を聞き、ルヴァは、
(今の私はあの頃のオスカーと同じ顔をしているということは、やはりこのもやもやした気持ちはオスカーが私を想ってくれている気持ちと同じということでしょうか)
 と独り言のようにつぶやくと
「チャーリー。ありがとうございます」
 とチャーリーにお礼を言った。
「い〜え。別にオレはな〜んもしてまへん。でもルヴァ様の気持ちがすっきりしたんならそれに越したことはありまへん。これよかったらどうぞ」
 そう言い、チャーリーはルヴァに手作りクッキーのキットを渡した。
 ルヴァはうれしそうにそれを持ち帰りチョコレートのお返しを渡す日に手作りクッキーを渡すことにした。

13日
 ようやくオスカーとリュミエールは聖地に戻ってきた。
 報告を終えたオスカーは自分の執務室に戻る前に一度ルヴァの執務室に足を運んだ。
「ルヴァ。邪魔するぞ」
 ノックとともに執務室のドアを開けたオスカーはルヴァの執務室でくつろいでいるオリヴィエと遭遇した。
「オスカーおっかえり〜。なんか今回は結構大変だったみたいだね」
「まぁな。まさかこんなに時間がかかると思わなかった」
そう言いながらいすに座るオスカーの前にルヴァはお茶を置いた。
「はい。オスカーお疲れ様でした。ゆっくりお茶でも飲んでいってくださいねぇ」
 暫く三人でお茶を飲みながらたわいのない話をしていた。
 話もひと段落した頃。
「じゃ、アタシはそろそろ帰るね」
 と言ってオリヴィエが出て行った。二人になったとたん。
「お、俺もそろそろ帰ることにする」
 とオスカーも立ち上がった。
 ルヴァは部屋を出て行こうとするオスカーの背中に。
「あ、あの。オスカー。明日なんですけど、執務の終わった後少しで良いのでお時間いただけませんか?」
 と声をかけた。
 オスカーは振り向くと。
「わかった」
 と答え、ルヴァの執務室を後にした。

 そして14日ホワイトデー当日。
 滞りなく、執務を終えたルヴァはいそいそと帰り支度をし、チャーリーにもらったキットで作ったクッキーを手にオスカーの執務室へ足を運んだ。
 ドアをノックし、返事を待つ。中から応えの声があるとルヴァはオスカーの執務室のドアを開けた。
「ルヴァか。もう少しで終わるので、そこでちょっと待っててくれ」
とオスカーはルヴァにソファーを勧めるとさっさと仕事を終わらせるべく手を動かした。
「気にせずゆっくりしてください」
 ルヴァはソファーに座りながらそう言った。
「よし。ようやく終わった」
 オスカーは書類を片付けながら、
「ところで、一体どうしたんだ?」
 と尋ねた。
「あの〜ですね。一月前。貴方にチョコレートを頂いたじゃないですか。実はもらってすぐはどうすれば良いのか悩んだんです」
ルヴァがそこまで言うと、オスカーはルヴァの前のソファーに座った。
「で、貴方がサクリアの暴走を止めに出かけているとき、いつまでたっても帰ってこない貴方のことが無意識のうちに気になっていたようなんです。チャーリーに半月前の貴方と同じ顔をしていると言われて自分の気持ちがわかったんです」
 ルヴァは自分の横に置いてあったクッキーに手を伸ばすと、
「で、これが私の気持ちです。どうやら私も貴方と同じ気持ちだったみたいです」
 クッキーをオスカーの前に差し出した。そしてゆっくり立ち上がると机越しにオスカーに近づき、そっと口付けをした。

FIN


  旅行に行ったのと風邪を引いたのとでアップが遅くなりましたが、
  ようやく書きあがりました。
  (予定では旅先で書く予定だったのですが、発熱のためそれどころでは…)
  時間に追われてのアップですので、いつも以上に推敲できておりません。
  おかしなところがありましたら、メールやBBSでお知らせください。




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