HAPPY BIRTHDAY


「こんにちは、オリヴィエ様。こちらにいらしてたのですね」
 公園の奥のカフェテラスにいたオリヴィエの元にアンジェリークがやってきた。
「あ〜ら、アンジェリークじゃないの。もしかしてアタシを探していたのかしら?」
「はい。オリヴィエ様にご相談があって……」
 オリヴィエは前のいすを勧めると近くを通るウエイトレスに飲み物を頼んだ。
 ウエイトレスが飲み物を持ってくると暫くこちらに来ないように頼み、アンジェリークに話しかけた。
「で、急にかしこまっていったいどうしたの?私でいいなら相談に乗るわよ」
「こんなことオリヴィエ様にしか相談できないんです」
 アンジェリークはそう前置きして話始めた。
「実は、好きな人がいるんです。でも女王候補としての立場もあって、ロザリアにも相談できないし、守護聖がたにしても……」
(まぁ、相手が誰なのかにもよるけどジュリアスやクラヴィスやオスカーにはね)
 オリヴィエはそこまで考え
「で、一体誰が好きなの?」
「実は……ルヴァ様なんです」
「よりにもよってルヴァ――ね。はっきり言うけどルヴァはこちらからはっきり言わないと気がつかないわよ。傍から見ててわかることでもルヴァは全く気がつかないタイプだから」
「そうなんです。いくらルヴァ様のところに通っても女王候補として通っているとしか思ってもらえなくて……。で、どうしたらいいのかアドバイスがもらえないかと」
「そうねぇ」
 オリヴィエは暫く考えると
「そうだ。もうすぐ誕生日だ」
 と声を上げた。
「誕生日?」
「そう。確か7月12日がルヴァの誕生日だったと思うよ。その時に何かプレゼントしてアタックしてみてはどう?」
 ウインクしてみせるオリヴィエにアンジェリークはお礼を言うと、早速ルヴァの誕生日に渡すプレゼントを選びにお店へ向かった。
 向かった場所は最近できた雑貨屋さん。そこでルヴァへのプレゼントとメッセ−ジカードを買った。


 ルヴァの誕生日。一日の執務を終わらせたルヴァは私邸まで歩いて帰ることにした。
 月明かりに照らされた小道をのんびりと歩いていると家の前に一つの人影が見えてきた。
「おや?こんな時間に誰でしょう」
 ルヴァは少し歩くスピードを上げると家へと急いだ。
「おや。貴女でしたか。こんな時間にどうかしましたか?」
 家の前にいたのはアンジェリークだった。
 ルヴァはアンジェリークを家に招きいれ、応接室へ通すと「ちょっと待っててください」と言って飲み物の用意をしに席を立った。
 暫くするとハーブティを手にルヴァが戻ってきた。
「リュミエールに貰った茶葉なんですけどね。私が入れるのでおいしく出るかどうか」
 そう言うとルヴァはハーブティーを淹れ始めた。
 アンジェリークがルヴァの手元を見ているとルヴァは
「そんなに見ないでください。恥ずかしいですから」
 と言い、ポットに入れたお茶をカップに注ぎ、アンジェリークの前に置いた。
 アンジェリークは一口口に含むと自然と「おいしい」と言葉が口をついた。
「そうですか。それならよかったです」
 ルヴァはそう言い、自分もお茶を飲んだ。
「で、一体こんな時間にどうしたのですか?」
 ルヴァは外で聞いた事を再度聞いた。アンジェリークは当初の目的を思い出し、
「実はオリヴィエ様に今日がルヴァ様の誕生日だってお聞きして……。プレゼントを持ってきたんです」
 アンジェリークはそう言うと小さな包みを取り出した。
「わざわざそのために来てくれたんですか?ありがとうございます。あの開けても良いですか?」
 ルヴァはアンジェリークが頷くのを見るときれいにラッピングをはずし、出てきた小さな箱の口を開けた。
 中から出てきたのは回りに細かい細工のしてあるルーペと二つ折になっている小さなメッセージカードだった。
「ありがとうございます。ちょうど新しいルーペがほしかったんですよ〜」
 ルヴァはそう言うとうれしそうにルーペを首から提げ、次にメッセージカードを手にした。
「これも今見ても良いですか?」
 ルヴァは確認してからメッセージカードを開いた。
 そこにはアンジェリークのルヴァに対する想いが書いてあった。
 ルヴァはカードを読み終えると顔を上げ、アンジェリークを見た。
 アンジェリークは目の前で読まれたことが恥ずかしかったのか、顔を紅く染め、下を向いていた。
「あの。アンジェリーク」
「は、はい」
 名前を呼ばれ顔を上げたものの、声が裏返ってしまいますます顔を赤らめるアンジェリークに
「あの。まずお礼を言わせてくださいね。こんな素敵な誕生日を迎えたのは聖地にあがってから初めてです。本当にありがとうございます」
 ルヴァはそこまで言うと軽く頭を下げた。
「そして、こんな私のことを想ってくれてありがとう。本当は私から貴女に言ってあげないといけない言葉だったのだと思うのですが、女王候補として頑張っている貴女の重荷になってはいけないと思い、言えなかったんです。こんな私を許してくださいね」
「もしかしてルヴァ様も私のことを……」
 ルヴァもアンジェリークのことを想っていると取れる言葉にアンジェリークはそこまで言うと、不意に立ち上がったルヴァにテーブル越しに唇を塞がれた。
 一瞬の出来事に驚きで目を丸くするアンジェリークにルヴァは唇と離すと
「すいません。貴女の気持ちを知ってしまい我慢が出来なくなってしまいました」
 にこりと微笑みそう言うと、そのまま耳元で
「私も貴女のことが好きです。女王候補としてではなく、一人の女性として誰よりも愛しています」
 と囁いた。


FIN



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      ここまで読んでいただきありがとうございます。
     年に一度のノーマルカップリング小説と化してますが、
     今年も無事女の子とHappy Endを迎えれたルヴァ様です。
     毎回書いていますが、間に合わないかと思いました。
     というのも6月の下旬に差し掛かっても全くストーリーが浮かばず、
     ここに来て更新が止まるかと思いました。
     しかし何があったのか6月25日頃に頭の中でリモージュが
     オリ様を探しはじめたので、無事誕生日を迎えることが出来ました。
     本当によかったです。
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