Whiteday


「オリヴィエすいません。今ちょっと良いですか?」
執務室に戻ろうとドアノブに手をかけていたオリヴィエは声の主、ルヴァのほうを向いた。
「おいしいお茶が手に入ったものですから、よかったらいかがです?」
ルヴァは再度オリヴィエに声を掛け執務室へ招いた。

「で、どうしたの?」
オリヴィエは2杯目のお茶を注いでもらいながら尋ねた。
「どうしたの―――とは?」
ルヴァは席に着くと聞いた。
「だっておいしいお茶が手に入ったからって私だけを誘うなんておかしいでしょ。だから何か相談事でもあるのかな〜っと」
ルヴァは苦笑すると
「オリヴィエは何でもお見通しですね」
と言い、言葉を続けた。
「実は先月、ある人にチョコレートとブックカバーを頂いたんです。そして手紙もついていたのですけどね。どうも、私に、そのー。好意を持ってくれているようで…」
ルヴァはお茶で口を湿らすと
「で、迷惑でなければ今度の14日に森の湖に来てほしいと書いてあったんです」
そこまで言うと、オリヴィエは
「ジュリアスね」
と名前を口にした。
「え?いや、あの、その――」
「隠さなくてもイイよ。ジュリアスの態度見てたらばればれだから。で、ルヴァはジュリアスの事好きなの?」
「好き、というか。大切には思います。休みなく仕事をしているときなんかは、体を壊さないか心配に思ったりします。ただ、この気持ちがですね。その〜ジュリアスが私を想ってくれている気持ちと一緒なのかはわかりませんが…」
顔を赤くしながら応えるルヴァにオリヴィエは
「相手の事が気になる。その気持ちは恋だと思うよ」
と言うと、
「で、ルヴァはどうしたいの?」
と続けた。
「14日は執務が終わったら湖には行こうと思っています。ただ、私の気持ちがはっきりしなくて」
「でも、ルヴァはジュリアスのことが気になるんでしょ」
「はい」
「なら何も問題ないじゃない」
「今のアンタの気持ちをそのまま伝えたらいいんじゃないかな。今の私に言ってあげれるのはそれだけ」
「そうですね。ありがとうございます」
ルヴァはそう言うと、オリヴィエは
「じゃ。そろそろ執務に戻るね」
と言い、席を立った。
ルヴァの執務室を出る直前。オリヴィエは振り向くと
「一つだけ、私からのアドバイス。なぜジュリアスが14日を指定してきたのか考えてみたら」
とだけ言い、出て行った。

ルヴァはオリヴィエが言っていた14日とは何なのかを調べてみることにした。
私邸の書物庫。執務室の書庫。そして聖地の図書館へと足を運び、一所懸命調べてみたが、3月14日について書いてある書物は見つからない。

あと少しで約束の14日となるころ、ルヴァは女王補佐官からの命で下界に降りることになった。
下界に降り、仕事を済ませたルヴァはふらりと公園に足を向けてみた。
行った先は一月ほど前オスカーが行ったという公園。前回は女性がたくさん群がっていた店先も今回は男性が群がっている。
いったい何をしているのかと思い、たまたま買い物を済ませ、群れから出てきた男性に聞いてみた。
「あの〜。この人だかりはいったいなんですか?」
「えっ。あんた知らないのかい。バレンタインデーのお返しを買いに来たんだよ」
「バレンタインですか」
「あぁ。あんたほどの人だったら2月14日にチョコレートか何かもらっただろう?」
「えぇ。確かにいただきましたが、それがこの人だかりと関係があるのですか?」
男は本当に知らないのかとびっくりしながら
「2月14日はバレンタインデーといって好きな人に、まぁ基本はチョコレートをあげる日で、3月14日はそのお返しをあげる日なんだ」
「そうだったんですか」
ルヴァは男にそう言うと
「ところでバレンタインデーはチョコレートなんですよね。ホワイトデーは何がいいんですかね?」
と尋ねてみた。
「特にこれって決まってないみたいだな。マシュマロだったり、クッキーだったり、あっ。キャンディーというのも聞くな」
「わかりました。どうもご親切にありがとうございました。私も早速何か買いに行きます」
ルヴァはそう言うと人だかりの中へと向かっていった。

そして14日
執務を終えたルヴァはジュリアスへのプレゼントを手に、森の湖へと向かった。
ルヴァが着くと、すでにジュリアスは湖で待っていた。
「ジュリアス」
とルヴァが声を掛けると滝のほうを見ていたジュリアスが振り向いた。
「ルヴァ・・・」
ジュリアスはそれだけ言うと言葉が続かず、黙ってしまった。
そんなジュリアスを見、
「あの、ですね。ジュリアス。まずはお礼を言わせてください。こんな私に好意を持ってくれてありがとうございます」
ルヴァはそう言うと頭を下げ、ジュリアスの目の前まで歩み寄ると、
「これ、先月のお返しです。ホワイトデーは特に何をあげたらいいのかわからなかったので、実用的なものを選びました。気に入っていただけるとうれしいのですが…」
ジュリアスはルヴァの手から小さな細長い包みを受け取り
「開けても良いか?」
と尋ねた。
「ちょっとはずかしいですけども、ジュリアスが今見たかったら良いですよ」
ルヴァは微笑みながらそう答えると、包みを開けるジュリアスの手元を見ていた。
出てきたのは小さなメッセージカードと万年筆。
メッセージカードにはただ一言【貴方のことをとても大切に想っています】と書かれていた。
そのカードをみたジュリアスは、信じられないという表情で
「本当に良いのか。私はこの気持ちをあきらめなくても良いのか」
とつぶやいた。
「えぇ。私のこの気持ちが恋なのかどうかはわかりませんが、貴方のことを誰よりも大切に思っていますよ」
ジュリアスはルヴァのその言葉を聞き、
「その――。そなたを抱きしめても良いだろうか」
と聞いた。
「えぇ」
ふわりと笑うルヴァの微笑みに助けられジュリアスはおそるおそるルヴァの体に腕をまわした。
「本当にこれは現実なんだろうか・・・」
「現実ですよ。私はここに居ます。いつまでも貴方のそばに・・・」
いまだ信じられないとつぶやくジュリアスの体にルヴァもそっと腕を回した。


FIN




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      とりあえずホワイトデー間に合いました。
      先週は研究発表に出なくてはいけなくて先月のバレンタインが終わってから
      ひたすらそっちの原稿をやっていました。
      そして昨日は遙かライヴに行っていた私。
      この原稿が間に合ったのは奇跡に近いです。
      そして、これはいつものことですが、推敲きちんと出来てないです。
      ここおかしいぞと言うところがあったら、web拍手かメールフォームで教えて
      もらえるとうれしいです。
      今回あまり甘くなりませんでしたが、如何だったでしょうか?
      感想をいただけるとうれしいですっ!こちらも掲示板をはじめweb拍手や
      メールで連絡いただけると次への励みになります。
      どうぞよろしくおねがいしますm(_ _)m