St.Valentine's Day


は〜
ジュリアスは今日何度目かの溜息をついた。
最近の私はどうしたのだ、気がつけばルヴァの姿を視線で追っている。これがいつもオスカーが言っている"恋"というものなのか・・・。
「・・・アス様。ジュリアス様」
物思いにふけっていたジュリアスはいつの間に来ていたのかオスカーの声で現実に戻された。
「オ・オスカー。そなたいつの間に」
「大分前からおりましたが。----ところでジュリアス様どうかされたのですか。ジュリアス様がぼーっとされるなんてめずらしい」
ジュリアスはオスカーにそう聞かれ、相談することにした。
「それはまさしく"恋"ですね」
ジュリアスの話を聞いたオスカーは迷うことなくきっぱり言った。
「やはりそうか・・・。もしかしたらそうかとも思ったのだが、相手がルヴァなのでな。しかしよりによってこの私が同性を気に入るなんて・・・」
ジュリアスは自嘲気味に笑うと、
「まぁこの気持ちが"恋"というものであるということがわかったので良い事とする。オスカーありがとう」
執務机ごしに頭をさげるジュリアスを見てオスカーは
「ジュリアス様諦めるのですか。自分の気持ちがわかればそれでいいのですか。そんなの誇りの守護聖じゃないです」
「そうは言っても、このような気持ちをルヴァに打ち明けたところでどうなる。迷惑以外のなにものでもないであろう」
「だからって、このままでいいわけないじゃないですか」
めずらしくオスカーはジュリアスに声を荒げて意見すると。
「ジュリアス様がそんなに臆病だと思いませんでした。正直がっかりです」
と言い捨てジュリアスの執務室を後にした。

「おくびょう--------か」
オスカーのでていったドアを見ながらジュリアスはつぶやいた。

「こんにちはジュリアス様」
「あぁ、アンジェリークか。今日は日の曜日だが私に何か用か?」
「もしよろしければ私の部屋でお話ししませんか?」
ジュリアスはここにいても何もすることなくムダに1日が過ぎる予感がし、アンジェリークの誘いに応える事にした。
アンジェリークの部屋に通されたジュリアスはアンジェリークが飲み物を用意している間に部屋の中を見回した。
「ジュリアス様。お待たせいたしました」
そう言いながらエスプレッソの入ったカップを持って現れたアンジェリークの方を見、赤丸の入ったカレンダーに目に留まった。
「アンジェリーク。あのカレンダーの赤丸は何の日なんだ」
何だか気になったジュリアスは聞いてみた。聞かれたアンジェリークは一瞬つまらぬことにうつつを抜かすなと怒られるかと思い、すぐに答えれなかった。
「いや、プライベートなことで答えにくいのなら良いのだが、ちょっと気になったもので」
何も言わないアンジェリークにジュリアスはいらぬ事を訪ねたとばかりに言う。
「ジュリアス様怒りませんか?」
そう尋ねるアンジェリークにジュリアスはひとつ頷いた。
「実は2月14日は私のいた星では好きな人にチョコレートと一緒に気持ちを打ち明ける日なんです」
「そうか。2月14日はそんな日なんだな。アンジェリーク。教えてくれてありがとう。礼を言う」
ジュリアスは頭を下げた。
「そんな」
アンジェリークはジュリアスに怒られなかったことにホッとした。

「オスカー」
聖殿内を歩いていたオスカーはジュリアスに呼び止められた。
「ジュリアス様。何か」
少しつっけんどんに言うオスカーにジュリアスは
「この間は悪かった」
と頭を下げ、
「折り入ってオスカーに頼みたいことがある」
と言葉を続けた。
「私に頼み?」
「あぁ、実は前の日の曜日に・・・」
とアンジェリークの部屋での事を言った。話を一通り聞いたオスカーは
「で、私に何を?」
「下界に降りて、ルヴァのためのチョコレートを調達してきてもらいたい」
「いや。しかしジュリアス様。それはご自分で選ばないと」
そう言うオスカーの言葉を途中で止めると
「わかってはいる。だが、守護聖の長たる私が私用で聖地を離れるわけにはいかない。そしてこんなことを頼めるのは。オスカー。そなたしかいないのだ」
「ジュリアス様。頭をあげてください」
いつまでたっても頭を上げないジュリアスにオスカーは声をかけた。
「どんなのでも文句は言わないでくださいね」
「では」
「今回だけはジュリアス様の代わりに買いに行きますが、次、何かをする時はご自分でしてください」
オスカーはそう言うと
「善は急げと言いますし、今から言ってきます」
と言い、星の小径へと向かった。

下界に降りたオスカーはいろいろなチョコレートが集まっている公園内の特設会場へと足を向けた。
「よく考えたらチョコレートって女性が男性に渡すんだよな」
ボソリとつぶやいたオスカーの目の前に広がる光景は女性客がチョコレートを品定めしている風景。
その中に自分も混ざってチョコレートを買うというのはさすがのオスカーでも抵抗があるらしい。
どうしたものかと遠巻きに見ていると、
「あの〜。どうかされましたか?」
と青年が声をかけてきた。
「実は人にに頼まれてチョコレートを買いに来たのだが、さすがにあの中に入るのはためらわれてな」
と言った。
「どんなものがよろしいのですか?もしよければ選んできますが」
青年はどうもお店の店員だったらしく、ルヴァの性格や趣味を伝えると「暫くおまちください」と言って、店の方へ歩いていった。
オスカーは暫く待っていると店員は見本を持って戻ってきた。
「まずこれですがこれはシンプルなチョコレートにブックカバーがセットでついているものです。本好きな人には大変人気です」
「ほー。チョコレートとブックカバーのセットか。なかなかいいかもしれんな」
オスカーは見本を見ながらそういった。
「あとこれは普通は売っていないのですがここまで来てくださったと言うことでどうでしょう」
そう言って見せてくれたのは先ほどと同じくチョコレートとブックカバーのセット。違うものと言えばさっきのチョコレートは普通のチョコレート。今回のは緑色をしていた。
「この緑色のはなんだ?」
「これは抹茶の生チョコです。先ほどお話を伺ったところお茶もお好きなようですのでお口にあうかと…」
オスカーは店員から両方とも購入すると聖地へと戻った。

「ジュリアス様失礼します」
オスカーはそう言いジュリアスの執務室のドアを開けた。
「あぁ、オスカー。ご苦労だった」
執務の手を止めたジュリアスはオスカーのためにカプチーノを入れてくると、オスカーの座っている前に置いた。
ジュリアスがオスカーと向かい合う形で座ると、オスカーは早速テーブルの上に2つの包みを置いた。
「ん?」
2つある事に驚いたジュリアスはオスカーに説明を求めた。
「2つともチョコレートとブックカバーのセットです。1つは普通のチョコレート。もう一つ。ここに”生”と書いてあるのは抹茶の生チョコです。ルヴァにあげた残りは俺からジュリアス様へのプレゼントです。ルヴァとおそろいのブックカバーを使ってください」
「ありがとう。オスカー。本当に感謝している」
深々と頭を下げるジュリアスに、オスカーは
「では、俺はこの辺で」
と自分の用事は済んだとばかりに出て行った。

2月14日
執務が終わり、守護聖が私邸に帰りだす頃、ジュリアスは生チョコの包みに手紙をつけ、ルヴァの私邸へ届けた。
私邸に帰り着いたルヴァは郵便ポストに箱が入っていることに気がつき、
館へ持って入ると、箱につけてある手紙を開いた。
そこには
【 親愛なるルヴァ
 最近そなたのことが頭から離れない。
 今何をしているのか どう過ごしているのか
 そんなことばかり考える。
 人はこれを恋と呼ぶらしい。
 もし私のこの気持ちが迷惑でないなら
 来る3月14日
 執務が終わってからで良いので
 森の泉に来てほしい。
 無理強いはしない。
 明日からはまたお互い執務に励もう
                 ジュリアス 】
と書いてあった。
手紙を読み終わったルヴァは包みを解き、
中身を確認すると、生チョコを一つ口に入れ、うれしそうに微笑んだ。


FIN



  とりあえずバレンタインものです。
  今回はなんだかルヴァ様の出番が少ないですね。
  一番出てるのはやっぱりオスカー?
  ホワイトデーはどうもっていこうかと考え中。
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  すごくうれしいです。
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