ゼフェルが視察のため、下界に仕事に降り立ったとき、町のあちらこちらで木に電飾が施されていた。
「なんだよ一体。祭りでもあるのかよ」
ゼフェルはキョロキョロしながら街を歩き、視察を開始した。
今回のゼフェルの仕事は三日間、鋼のサクリア力の変化を見ること。
時間には余裕があるため、観光をして日々を過ごした。
視察から帰ってきたゼフェルは王立研究院で報告を済ませると、暫く私邸の地下工場にこもった。
24日昼。
「おし、ようやく完成したぜ。後は店の予約をして。あ、あいつの都合も聞かねーとな」
ゼフェルはそう言うと工場を後にし、公園のカフェテラスへと向かった。
カフェテラスでゼフェルは手をあわせ、頭を下げ、何か頼んでいる様子。
暫くして、カフェテラスから出てきたゼフェルは公園の出口へと向かう。そこでルヴァに出くわした。
「よっルヴァ。ちょーどオメーんとこ行こうと思ってた所なんだ。今ちょっといいか?」
「こんにちは、ゼフェル。どうかしたのですか?」
「いや、たいした事じゃないんだけどよー。今日の晩って空いてねーか?」
「今日。ですか?う〜ん。特に何もなかったと思いますが」
そう答えるルヴァを見て、ゼフェルはホッとすると
「ならそのまま用事いれずに空けておいてくれよな。夕方迎えに行くからさ」
ゼフェルはそれだけ言うと「じゃまた後でな」と言い、公園を後にした。
一度私邸に戻ったゼフェルは先ほどまで工場にこもって造っていた機械を手に森の湖の奥へと向かった。
「この辺でいいかな」
ゼフェルは草むらの中に隠すように機械を置くとタイマーをセットした。
「ふぁ〜。さすがに眠いな」
そう言うと腕時計で目覚ましをセットし、そのまま眠りについた。
夕方。
一眠りしたゼフェルはルヴァの執務室に向かった。ところがすでに聖殿は出たあとらしく、不在だった。
ゼフェルは「一度帰ったのかよ」とつぶやくとルヴァの私邸に向かった。
案の定ルヴァは私邸に戻っていたらしかった。
「すいませんね。わざわざこちらにまで来てもらって。すぐに聖殿に戻るつもりだったんですけどね〜。
で、今からどこへ行くのですか?」
呼び鈴を鳴らすといつもの執務服から動きやすい服装に着替えてルヴァは出てきて言った。
「とりあえず公園にでもいかねーか」
「はい」
ルヴァはうなずくとにこにこしながらゼフェルの隣を歩いた。
「なに、そんなににこにこしてんだよ」
「だってあなたと二人でこういう風に歩くのって久しぶりじゃないですか、だからうれしくって」
「な、なに言ってんだ」
ルヴァのセリフにゼフェルは照れると顔を赤らめた。
公園に着くと、日は暮れていた。
「なぁ、腹すかねーか?」
「そうですね、そろそろ夕飯の時間ですね〜」
「あ、あのよ。もしよかったら、そこのカフェテラスにでも行かねーか」
下を向きそう提案するゼフェルに
「もちろんいいですよ」
とルヴァは答え、二人はカフェテラスへ向かった。
カフェテラスのドアを開けると「いらっしゃいませ〜こちらへどうぞ」と言うウエイトレスに奥にあるテーブルに案内された。
「あの〜。ここ予約席となってますけど?」
本当にここで良いの?という顔で聞くルヴァに、
「はい。本日はゼフェル様より御予約承っておりますので」
とウエイトレスは答えた。
「え?」
と言う顔をしてウエイトレスとゼフェルの顔を交互に見るルヴァ。
ゼフェルはゼフェルで「いらないこと言いやがって」とウエイトレスをにらむ。
二人が席に座るとウエイトレスがシャンパンとシャンパングラスを運んできた。
「ゼフェル。これってもしかしてお酒ですか?」
「まぁ、アルコールは入ってっから酒だけど、ほとんど入ってねーから、オメーでも大丈夫だと思うゼ」
「いや。私がどうとかではなくてですね〜。あなたが…」
いつものごとく小言を言い出したルヴァを無視して、ゼフェルはグラスにシャンパンを注ぐと
「小言はまた今度聞くからさ、今日はオレのわがままに付き合ってくれよ」
そう言うゼフェルを見、ルヴァは「あなたって人は」とだけ言い、ゼフェルからグラスを受け取った。
「とりあえず、乾杯な」ゼフェルはそう言うとルヴァの持つシャンパングラスに自分のグラスをぶつけた。
ウエイトレスの運んでくる料理を食べながら二人は静かなひと時を過ごした。
最後にデザートとコーヒーが出てきたころ
「今日は何の日なんですか?」
とルヴァが聞いた。
「何の日と聞かれてもオレ自身よくわかってねーんだけど。とりあえず話は後にしよーぜ。
もう一ヶ所付き合ってほしい場所があるんだ」
ゼフェルはそう言うとルヴァを森の湖へと誘った。
ゼフェルは湖のほとりで立ち止まると思ったが、そのまま湖を素通りし、奥へ足を踏み入れた。
花の咲く時期ならたくさんの花が咲いているこの場所も、今の時期はただの広場と化していた。
ルヴァが一通り周りを見渡した時、広場の奥から白いものが飛んできた。
ルヴァは手を伸ばしそれに触れた。
「雪、ですか」
「あぁ、この間下界へ調査で降り立ったとき、結構時間に余裕があったからさ、
動物園って所へ行って来たんだ。そこで、人口雪を降らしている所があって、機械を見せてもらったんだ」
「では、これはゼフェルが造ったのですか?」
「まぁな」
二人は暫く降り注ぐ雪を見ていた。
「さっき今日がなんの日かって聞いただろ?」
ゼフェルはおもむろに口を開くと言葉を続けた。
「この間視察に行った土地では24・25日と祭りがあるらしくって、準備ですっげー賑わってた。
その祭りってのも、好きな人にプレゼントを渡して一緒に過ごすのがベストらしくって…」
ゼフェルはそこで一度言葉を切るとその場で横になり、
「ルヴァに今まで誰にも貰ったことのないようなプレゼントをしたくってさ。
星の見える夜に雪が降るなんて普通じゃありえねーだろ」
いきなりのゼフェルの告白とも取れるセリフにルヴァはびっくりし、「えっ。あのー。そのー」とどもるばかり。
その様子を見て、
「あっ。わりー。今の言葉聞かなかったことにしてくれ」
とゼフェルが言った。その言葉を聞き、ルヴァは一瞬悲しそうな顔をし
「貴方が私のことをどう思っていようとも。―――私は貴方が好きですよ。だから―――。
一つだけ私のわがままに付き合ってください」
ルヴァはそう言うと横になるゼフェルを覗き込み、
「素敵なプレゼントをありがとうございます」
と言い、軽く口付けをした。
今年のクリスマスはゼフェルにしました。
相変わらずこのカップルって恋愛下手同士で、進歩がないですよね(苦笑)
今回最初のプロットの時点では今までにないプラトニックになるところだったんです。
だってキスもしなかったんですよ。
流石にクリスマスなのに、キスもないってどうよっ!と自己突っ込みが入り、
無事キスはさせることが出来ました。
でも見事にパターン化してきました。どうしたものでしょう。
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