St.Valentine's Day



「さて、本でも返しに行きましょうかね〜」
ルヴァは本を手に図書館へ向かった。
「おや?」
カウンターで本を返し図書館内をぐるりと見渡したルヴァは意外な人物を目にした。
「オリヴィエ。こんにちは。めずらしいですね。貴方が図書館へ足を運ぶなんて」
 背後から声をかけられたオリヴィエはびくっとすると読みかけの本を背に隠し、ルヴァのほうを見た。
「あ、あーらルヴァ。こんなところで会うなんて奇遇ねー」
「本当にそうですね。ところでオリヴィエはどんな本を読むのですか?」
 背に隠した本を見ようとルヴァはオリヴィエの後ろを覗き込む。
「そ、それよりルヴァ。急がなくていいの?今日は会議が入ってなかった?」
「そういえばそうでした。ありがとうオリヴィエ」
 ルヴァはそう言うとオリヴィエの前から立ち去った。
「は〜。疲れた。まさか今日に限ってルヴァと会うなんて…。アタシがアンタのためにお菓子を作るってのはバレちゃまずいんだから」
 オリヴィエはぶつぶつ言いながらお菓子の本をめくった。
「あとは材料をそろえないとね。チャーリーのところにでもいってみようかしら」
何冊かの本を見、作るお菓子を決めたオリヴィエはそう言うと早速チャーリーの元を尋ねた。
「は〜い。チャーリー。元気〜?」
「おっ。オリヴィエ様やないですか。毎度いらっしゃ〜い。しかしオリヴィエ様はいつもナイスタイミングで来はりますな〜。
ちょーど新デザインのアクセサリーを入荷した所なんです。よかったらいかがですか〜」
「それはなかなかいいお誘いなんだけどね。今日は別にお願いがあって来たのよ」
「オリヴィエ様のお願いですか〜」
ちょっと嫌そうな顔をするチャーリーに
「そんなあからさまに嫌な顔しないでよ」
といい、
「実はほしいものがあるのよ。この紙に書いてあるから明日までになんとかそろえてもらえない?」
と言葉を続けた。
紙を受け取ったチャーリーは中身を確認し、
「なんや。お菓子の材料やないですか。オリヴィエ様作りはるんですか?」
と聞いた。
「ええ、まぁ。ちょっと作ってみようかな〜と思って。で、どうなの。明日までに材料そろいそう?」
「これなら大丈夫です。特に難しいものはなさそうですし、明日のお昼頃にでもまた来てください」
チャーリーのその言葉を聞き、オリヴィエは「よろしく〜」といい、店の前を後にした。

次の日の昼過ぎ。オリヴィエは約束通りチャーリーの店に足を運んだ。
「は〜い。チャーリー。材料はそろった?」
「はいな。約束通り、材料そろえさせてもらいました。まずは、ホワイトチョコレート。そして抹茶。コアントロー。でたまごボーロです」
「さっすがチャーリー。また時間のあるときにアクセサリー見せてもらうわね」
オリヴィエはそう言うと、チャーリーから材料を受け取り、私邸に向かった。
オリヴィエは本を片手に早速お菓子作りに挑戦。といっても結局はチョコレート。そんなに難しくはないはず…。
鼻歌を歌いつつ、楽しそうに作っていき、【抹茶チョコレート】が完成した。
冷やすのに時間がかかり、結局出来上がった時には外は暗くなっていた。
「あとはラッピングをしてルヴァのところに持っていくだけね」
オリヴィエは丁寧にラッピングをし、ルヴァの私邸に向かった。
ルヴァの私邸についたオリヴィエは少し緊張した顔で、呼び鈴を鳴らした。
暫くすると屋敷のドアが開きルヴァが出てきた。
「おや?オリヴィエ。こんな時間にどうしたのですか?」
「えっと。その…」
なんと言っていいのか考えているうちにルヴァは門扉を開け、
「寒いでしょうし、とりあえず中へどうぞ」
と屋敷の中へ促した。
しかし、いつまでたっても動こうとしないオリヴィエを不信に思い、
「いったいどうしたのですか?」
と尋ねた。
うつむいたままのオリヴィエはようやく顔を上げ、
「あ、あの。これ。アンタにあげる」
オリヴィエは持っていた包みをルヴァに無理やり押し付けると、
「用はそれだけ。じゃ、また」
といい、そのまま走り去った。
「いったいどうしたのでしょう?」
ルヴァは首を傾げると包みを手に、部屋に戻った。
オリヴィエから渡された包みは緑色を基調にしたラッピングがされていた。
リボンを解くと中から小さな箱とメッセージカードが出てきた。
カードには”今日は何の日か知ってる?とある惑星で、の風習なんだ。口に合うかわからないけど、抹茶入りのチョコレート作ってみたからさ。よかったら食べてね☆ ルヴァへ オリヴィエより”と書いてあった。
箱の中には黄緑色したお菓子が入っている。ルヴァは一つつまむと口の中に入れてみた。
チョコレートの甘さと抹茶の苦さが口の中に広がった。

 次の日、オリヴィエの執務室前でルヴァはオリヴィエに逢った。
「あ、オリヴィエ。昨日はチョコレートをどうもありがとうございました」
「口にあった?」
「ええ、とてもおいしかったですよ」
「そう。よかった。じゃ」
オリヴィエはそういい、執務室のドアに手をかけた。
「あ、あの。オリヴィエ待ってください」
「なに?」
「昨日のチョコレートの意味って何なんでしょうか。勉強不足で申し訳ないのですが、どうしてもわからなくて・・・」
申し訳なさそうに言うルヴァに
「それはね。アンタが調べないと意味がないのよ。だから、ね。そういうことで」
オリヴィエはそれだけ言うと執務室のドアを開け、部屋に入った。
「は〜。一体どういう意味なんでしょうか」
ルヴァはそうつぶやくと自分で調べることにした。
オリヴィエのカードにはとある惑星の風習と書いてあった。
まずは、今まで視察に行った惑星の調査書を片っ端から調べた。
しかしそれらしいことは何も載っていない。
次に自室の書庫にこもり、本を探した。しかし何もわからない。
結局聖地の図書館へ向かい風習関係の本を読み漁った。
調べ物に没頭し、執務を休みがちになっているルヴァを想い、
「そうしてもアンタに自力で探してもらいたいんだよ」
とオリヴィエはつぶやいた。


Whiteday につづく…


今年のバレンタインは、オリヴィエ様。
いろんな意味で苦労しました。なんか全然あまあまになってくれなくて…。
だいぶ考えて書き直してもここまで。何が悪いのだろうか…。
とりあえずホワイトデーであまあまにもっていけるといいな〜と思っております。



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−−余談−−
実は、オリヴィエ様の作った抹茶チョコレート。私も作ってみました。
何年ぶりにチョコレートを作ったか…。
オリヴィエ様はたまごボーロで作っていましたが、実は本にはマシュマロも載っていまして、
マシュマロのを作ってみたのですが、マシュマロを切るのに大奮闘。
しかもチョコレートにマシュマロいれたら熱すぎたらしく、すぐにマシュマロが溶けかかりました。
下に抹茶チョコレートの作り方リンクで貼っておきます。
作ろうかな?と思われた方。マシュマロでするときは大きめに切る方がいいと思います。

抹茶チョコレートの作り方はこちら