WhiteDay


「ルヴァ」
 聖殿の廊下の前を歩くルヴァの後ろ姿に向かってオリヴィエは声をかけた。
ルヴァは立ち止まり振り向いた。
「おはよ。ルヴァ」
そう声をかけ、あまりにも顔色の悪いルヴァに
「顔色悪いよ。大丈夫?」
「ええ。大丈夫です。ご心配をおかけしてすいません」
ルヴァはそう言うと頭を一つ下げ、自分の執務室へ入った。
その姿を見、オリヴィエは一つ溜息をついた。
チョコを渡してからまもなく一ヶ月が経とうとしている。
オリヴィエはルヴァの身体が心配になり
『この間のチョコの意味今週の日の曜日に教えるからさ、そろそろちゃんと休みなよ』
と手紙を送った。

日の曜日。待ち合わせ場所に向かおうとオリヴィエが私邸のドアを開けた。
そこにはいつから居たのかルヴァが呆然と立ちつくしていた。
そんなルヴァはオリヴィエの顔を見ると開口一番
「あ、あの。オリヴィエ。わかりました」
と口を開いた。
「え?」
一瞬何のことだかわからなかったオリヴィエは目を丸くした。
「チョコの意味ですよ」
そう言うルヴァの顔は達成感で輝いていた。しかし寝不足なのか目の下に隈ができている。
身体の冷え切ったルヴァをオリヴィエは館へ招き入れた。
「疲れを取るために甘くしてあるけど。飲みなよ。身体も温まるよ」
オリヴィエはルヴァにホットココアを持ってきた。
「ありがとうございます。その心遣い本当にうれしいです」
ルヴァはそう言うとココアに口を付けた。
ルヴァが落ち着いたのを見計らい、
「で、いったいどうしたのさ。待ち合わせは公園のカフェテラスだったよね?」
と尋ねた。ルヴァは。
「ええ」
と言うと暫く下を向き、考え込んでいる。
「あの。チョコの意味がわかったんです」
ようやく意を決したのか、ルヴァが口を開いた。
「ただ…」
そう言い、またしても下を向いてしまうルヴァに。
「もしかして迷惑だった?」
とオリヴィエが声をかけた。
「いえ。そんな迷惑だなんて…とんでもない…」
ルヴァは顔の前で手を左右に振り、オリヴィエの言葉を否定している。
「別に迷惑なら迷惑だって言って貰ったらいいんだよ。意味を知ったのならわかってると思うんだけど、アタシはあんたのことが好き。それは事実だよ。でもだからってこの気持ちをあんたにまで無理強いするつもりは全くないから…。だから。そんな顔しないで。ね。お願い」
オリヴィエはそう言うと、
「ココアのお代わり入れてくるね」
とルヴァの前に置かれているマグカップを掴み立ち上がった。
そのまま部屋を出て行こうとするオリヴィエに
「あの…。待ってください」
とルヴァは立ち上がり声をかけた。
オリヴィエは立ち止まり、ルヴァの言葉を待った。
「実は、チョコの意味がわかったのが、夜明けだったんです」
ルヴァはそこで言葉を一度切ると、
「だから、何もお返しが無くて。それが貴方に申し訳なくて…」
オリヴィエはその言葉を聞き、ルヴァの前に戻っていった。
「ねぇ。ルヴァ。今の言葉聞いたらさ、あんたもアタシの事好きって言ってるように聞こえるだけど」
「えぇ」
消え入りそうな声でルヴァがオリヴィエの言葉を肯定する。
「ルヴァ」
オリヴィエは空のマグカップを投げだしルヴァに抱きついた。
「お返しなんていらないよ。あんたのその気持ちがアタシにとっての最高のプレゼントなんだから」
抱きつかれたルヴァもぎこちないながらもオリヴィエの背に腕を回した。
二人の視線が絡み合い、どちらともなく瞳を閉じゆっくりと唇を重ねた。



FIN


     バレンタイン小説が甘くなかった分ホワイトデーでは甘くしようとがんばりました。
     頑張っただけで全然甘くない気がしますが、それは言わない約束で…。

     少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。
     感想・苦情等何か連絡頂けるとうれしいです。(読みました〜だけでも結構ですっ!)
     メールorBBSによろしくお願いいたします。


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