enjoy the moonlight



今日は火の曜日。執務室で仕事をしていたリュミエールはノックの音に気がついた。
「どうぞ」
その応えを聞いたノックの主。ルヴァは執務室のドアを開け中に入った。
「こんにちはルヴァ様。今日はどうかされましたか?」
そう尋ねるリュミエールにルヴァは
「こんにちは、リュミエール。実は。ですね・あのー」
と何かを言いかけ言葉を止めた。そのまま俯いてしまったルヴァに
「ルヴァ様?」
リュミエールはルヴァの傍らに立ち声を掛けた。
「あの、今晩お暇ではないでしょうか?」
ルヴァはそう言うと少し上目遣いにリュミエールを見上げた。
そんなルヴァを見、リュミエールはうれしくなり
「今晩は何も予定はありませんので大丈夫ですよ」
と言った。そこの言葉を聞き、ルヴァは”ほっ”とすると
「では今晩12時前に聖殿前で待ち合わせしましょう。寒いですので暖かい格好で来てくださいねぇ」
と言い、リュミエールの執務室を後にした。


「こんばんは、リュミエール。もしかしてお待たせいたしましたか?」
「今晩はルヴァ様。私も今来たばかりですのでお気になさらず」
リュミエールはそう言うと「ところで」と言葉を続けた。
「今からどこへ?」
「実は、リュミエールと一緒に見たいものがありまして。ディアに話はしてありますので。――では参りましょうか」
リュミエールが連れて行かれた場所は下界にある公園。ルヴァは公園のベンチに座るとリュミエールに隣に座るように促し、そのまま空を見上げてしまった。
何がなんだかわからないままリュミエールはルヴァの隣に座り空を見ながら言葉を待った。
しかしいつまでたってもルヴァの口から言葉は発せられない。
「あのー」
「えっと」
痺れを切らせたリュミエールが口を開くのとルヴァが口を開くのが同時に起こった。
2人は顔を見合わせると
「ルヴァ様どうぞ」
とリュミエールが言った。それを聞きルヴァは
「実は今日はこの世界で【中秋の名月】と言われていまして、まぁ子どもたちの間では【十五夜】とも言われているのですが、昔の日田緒は縁側にお団子を置き、空の月を愛でながら団子を頂いていたようです。
最近は縁側のある家も減ってきているのであまりしていないようですが、とにかくつきが綺麗なのでぜひ貴方と見たかったんです」
そこまで言うと、ルヴァは持ってきていた鞄の中から団子と魔法瓶を取り出すと、2人の間に少し空間を作り、ベンチの上に置いた。
「で、リュミエールはさっき何を言おうと?」
「いえ。一体今日という日は何なのかお尋ねしようかと思っていたのです」
「そうですか。では先ほどの話で大体お分かりいただけたでしょうか?」
「ええ。とても」
リュミエールはルヴァに向かってにっこり笑った。
「では、私の話はそれくらいにしてお団子でも頂きませんか?ロザリアに教えていただきながら私が作ったので味の保証は出来ませんが――」
ルヴァはそこまで言うと下を向き。
「貴方に食べてもらいたいと言う気持ちだけはたくさん入っていますので」
と照れながら言った。
「え?ルヴァ様の手作りなんですか?」
「――はい」
「ルヴァ様!」
リュミエールはそう言うとルヴァの手を取り
「私のためにわざわざ作っていただけたなんて本当にうれしいです。早速頂きます」
と言い、団子を一つ口の中に入れた。その様子をじっと見詰めるルヴァ。
「おいし。今までこんなにおいしいものを食べたことがなかったです」
【そんな世辞を言ってももう何も出ませんよ」
ルヴァはリュミエールに褒められうれしそうに、そしてリュミエールの口にあった事にホッとしながら自分も団子を食べ始めた。
暫く2人は団子をお茶で談笑し、素敵な時間を過ごした。
最後の一つをリュミエールが食べ、暖かいお茶を飲み一息ついた所で
「ルヴァ様」
とリュミエールが声をかけた。
「はい?」
「今日は本当に素敵な時間。そしてお団子とお茶をありがとうございました」
「私の方こそ、こんな夜中にお付き合い頂いてありがとうございます」
ルヴァはそう言い、頭を下げた。
「あの。あと一つだけ頂きたいものがあるんですが、よろしいでしょうか?」
頭を上げるのを待ち、リュミエールは言った。
「でも、もう何もありませんよ」
「いいえ。ルヴァ様は素敵なものを持っています」
リュミエールはそう言うと考え事をしているルヴァの顔を覗き込み、そっと口付けた。
何が起こったのか一瞬わからず、そして状況を把握し、目を丸くしたルヴァに
「もらってばかりで申し訳ないのですが、今のが少しでもルヴァ様へのお礼になったらうれしく思います」
そう言うリュミエールにルヴァは
「これ以上にないお返しですよ」
と微笑んだ。


Fin




     お待たせして申し訳ありません。
     ようやくリュミエール×ルヴァのお月見ができました。
     お月見の時期はとうに過ぎていると言うのに・・・。
     本当はもう少しルヴァ様に月について(クレーターについて)話してもらおうかと
     思ったのですが、ストーリーとは関係ないかな?と思いやめました。
     リクエストをくれたハニーさま。お待たせしたあげくにこのようなもので・・・。
     すいません。少しでもお楽しみ頂ければ幸いです。
     



               BACK             HOME