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「ルヴァ失礼する」
オスカーはそう言うとルヴァの執務室のドアを開けた。
「あ〜らオスカーじゃないの」
「オ・オリヴィエ。なぜお前がルヴァの執務室でのんびりお茶なんか飲んでるんだ。執務はどうした執務は!」
「アンタにだけは言われたくないわね」
「それはどういう」
「だって、アンタが手ぶらでここにいるって言う事は執務をサボってるんでしょ?」
「そ・それは…」
 まだ言い合いの続きそうな二人を見かねてルヴァは口を開いた。
「あのーオスカー。もしよろしければお茶でも飲みませんかねぇ」
「いただきます」
「ルヴァ。私にもお代わりくれる?」
 カップを軽く持ち上げるオリヴィエに
「いいですよ」
 とルヴァは言い、お茶を入れるために立ち上がった。
 暫く異様な三人でのTea Time
 オスカーはさっさとオリヴィエが帰らないものかとちらちら見る。その視線に気づきながらもなかなか立ち上がらないオリヴィエ。

「さぁてと、そろそろ帰ろうかなー」
オスカーの視線が時間と共にするどくなるのを感じ、オリヴィエは席を立った。
「じゃルヴァ。ごちそうさま」
「またいらしてくださいね」
「オスカーがんばってね〜」
 オリヴィエは振り返るとひらひらと手を振って出て行った。
 オスカーはというと飲みかけのコーヒーを噴出しそうになった。
豪快に咳き込むオスカーに 
「大丈夫ですか?」
とルヴァは声をかける。
「だ・大丈夫だ」
オスカーはそう答えると
「ところでルヴァ」
と言葉を続けた。
「はい?」
「急なのだが、明日、空いてないか?急ぎの仕事がなければ付き合ってもらいたい事があるのだか」
「明日、ですか?あいにく先ほどジュリアスが明日までに仕上なければならない仕事を3つほど持ってきたのです」
「そうですか」
 オスカーはルヴァには残念そうに、心の中ではジュリアスに対して怒った。
「夜じゃダメですかね?急いで仕事を片付けて。そうですねー17時頃には空くと思うのですが」
(仕方ない。なんとか花火には間に合いそうだな)
「ではそれぐらいの時間に執務室に伺いします。では」
 オスカーは用事が済んだとばかりにルヴァの執務室を後にした。
残されたルヴァは明日のオスカーとの約束を破らないように仕事に取り掛かった。

 そろそろ今日の執務を切り上げようとした時、ドアがノックされた。
ルヴァは資料を一つにまとめると「どうぞ」と声をかけた。
「は〜いルヴァ。今日はお茶をありがとうね。ところでオスカーとはあの後何かあった?」
「いえ、何も」
「じゃぁ、あの後オスカーったらすぐに帰ったんだ」
「ええ、あなたが帰って、明日空いてるか?って聞かれて…」
「え?そんな事聞かれたの?で、何て答えたのよ」
「ジュリアスに急な仕事を頼まれたからってお断りしましたけど」
「そうなんだー」
「ええ、それが何か?」
「いやちょっとオスカーがかわいそうかなーと思って。代わりにアタシが仕事しようか?」
「ありがとうございます。でもきっと大丈夫ですよ。オスカーとの約束は17時にしてもらいましたので。どうしてもダメならお願いしますね」
「遠慮しないで言ってね。じゃ、アタシはそろそろ家に帰るわ。じゃーねー」
 オリヴィエはそう言うと私邸へと帰って行った。
 ルヴァも家ででも出来そうな書類を手に執務室を後にした。

次の日
 持ち帰り仕事の書類を持って執務室へと向かうと、部屋の前に人影があった。
「おや、おはようございますオリヴィエ。いったいどうしたのですか?」
「昨日仕事持って帰ったでしょ?出来具合はどうかなーと思って」
「ご心配ありがとうございます。新たな仕事が増えなければオスカーとの待ち合わせには間に合いそうです」
 ルヴァはそう言いながら執務室のドアを開けた。
「オリヴィエ、朝のお茶は如何ですか?」
「そうねーやめとくわ。ルヴァの仕事が終わらなかったらオスカーに殺されてしまうからね」
 オリヴィエはそう言うと自分の執務室へと入っていった。ルヴァはその背中を見送ると自分も執務室へ入り、仕事を始めた。
 その日一日は特に問題もなく執務は行われた。16時過ぎ、ようやく全ての書類が片付き、それを手にジュリアスの執務室へ向かった。
「ジュリアス、失礼しますね」
 ルヴァはノックとともにドアを開けた。
「ルヴァか。どうしたのだ?」
「頼まれていた書類が出来ましたので」
 そういい、手に持っている書類をジュリアスに手渡した。
 ジュリアスはそれに一通り目を通すと、
「ルヴァすまないが、この部分もう少し詳しく書いてくれ」
 と、訂正を頼んだ。ルヴァは書類を受け取ると
「わかりました」
 といい、ジュリアスの執務室を後にした。
「ふ〜困りましたね。今からこの仕事をやり始めて果たして17時に間に合うのでしょうか?でもオリヴィエに頼むわけにもいきませんしね〜」
 ルヴァは書類を前に一つ溜息をつくと仕事を再開した。
「ルヴァ。失礼する」
 ノックとともにドアを開け執務室に入って来たのはオスカー。
「すいません。まだ執務中でしたか」
「あ、オスカーもうそんな時間ですか?すいません。もう少しで終わりますので待ってて頂けませんかねぇ。ジュリアスに書類の訂正を言われてしまいまして、まだ終わってないんですよ」
 ルヴァは手を動かしつつ言った。
「忙しいのに悪いな。何か手伝うことあるか?」
「ありがとうございます。でも大丈夫です。あとはこの記事を写して参考文献を書くだけですので」
 オスカーはする事もなく、ルヴァの執務室にあるたくさんの蔵書を見ていた。
そこに今年の誕生日にあげた「ナンパの仕方の本」を見つけてオスカーの顔は自然と笑っていた。
「出来ました。あ、お茶も出さずにすいません。ジュリアスのところに持っていきますのでもう少しだけ待っててください」
 ルヴァはオスカーにお茶を入れるとジュリアスの執務室へ向かった。
 ジュリアスのOKをもらうとルヴァは急いで執務室へ戻り「おまたせしました」とドアを開けた。
 そこにはオスカーの姿はなく、置き手紙がおいてあった。そこには『馬を回してきます。用意が出来たら、一階へおこしください。 オスカー』と書いてあった。
 ルヴァは急いで帰り支度をすると一階へ向かった。そこには愛馬にまたがったオスカーが待っていた。
「おまたせしました。オスカー」
「ルヴァ。あまり時間がない。さあ、乗ってください」
 オスカーはそう言うと手を差し出した。ルヴァはその手を取ると馬にまたがろうとごそごそした。
衣類が邪魔をしてきちんとまたげないルヴァにオスカーは、
「そのまま横向きに座ってください」
 と言った。
「でも落ちませんか?」
「大丈夫です。落ちそうになったら俺が支えますので」
「そうですか?じゃぁ、そのまま横向けに座らせてもらいますね」
 ルヴァはそう言うとオスカーの前に横座りした。
 馬は颯爽と翔けて行き、聖地の外れにある丘についた。
 オスカーが馬から降り、ルヴァもオスカーの手をかりつつ馬から降りた。
「風が気持ちいいですね。昼間の暑さがウソのようです」
「ここは聖地で一番見晴らしがいいんです。しかもあまり人がこない、俺の一番好きな場所です。今まで誰にも教えた事はないんです」
「そんな場所に私なんかを連れて来てよかったんですか?」
「ああ、ルヴァだから連れてきたんだ。俺の大好きな場所に大好きな人と来たくて・・・」
「そうなんですか」
 ルヴァは普通に答え、再度オスカーの言葉を頭にめぐらせ、
「ええっ!?」
 と大声を出した。
ドンっ
 ルヴァの声と同時に大きな音がし、目の前に花火があがった。
「ようやく始まったようだな。今日はどうしてもルヴァにこの花火を見せたかったんだ」
「きれいですねー文献で見てから一度見てみたいと思っていたのですよ」
 ルヴァは目の前に次々と上がる花火に眼を奪われている。
「美しいな・・・」
オスカーはポツリと言葉を溢した。
「そうですね、とても綺麗です」
「ああ。花火に照らされて微笑むお前がな・・・」
「ええ?」
 ルヴァはその声で花火の世界から現実に戻され、隣に座るオスカーの方を向いた。
 目の前にオスカーの顔がアップになる。気がつけばそのまま唇をふさがれていた。
ドンっ
 花火の音でオスカーは唇を離した。
 目を見開き、何を言ったらいいかわからず口をパクパクさせているルヴァに、
「すまん。ルヴァが花火ばかり見るので、ついつい嫉妬してしまった」
 オスカーはわびるとルヴァから視線をずらし、花火を見た。
 いつまでたってもオスカーから視線を外さないルヴァに、
「そんなに見つめないでください。どうなっても知りませんよ」
 と言った。一瞬視線がかちあい、ルヴァは頬を染めるとそれを隠すかのように花火を見る。
打ち上げ花火、仕掛け花火とルヴァは花火大会を堪能した。
 最後に豪快に花火が上がると花火大会は終了し、辺りは闇に包まれた。
明かりはただ、空に瞬く星のみ。
「クシュン」
 暫く綺麗な星空を見上げていたルヴァはくしゃみをした。
すかさずオスカーは上着を脱ぐとルヴァの肩に掛け、後からそのまま抱きしめた。
「オ・オスカー」
 いきなりオスカーに抱きしめられ、心臓がバクバクしているルヴァは小さい声で名前を呼んだ。
「ルヴァ。今日は付き合ってくれて本当にありがとう」
 オスカーはルヴァに顔をうずめたままお礼を言った。
「いえ、お礼を言うのは私のほうです。こんな素敵な花火が見れて本当によかったです」
 ルヴァはそう言うとオスカーの頭を撫でた。びっくりしたオスカーは顔を起こすとルヴァを見た。
「本当にありがとう。オスカー」
 ルヴァは頬を染めたまま微笑むと、心からお礼を言った。
「ルヴァ」
「オスカー」

   星の瞬く空の下で二人の唇がゆっくりと重なった。
   その頭上を二人を見守るように一つの流れ星が流れていく…




Fin



          

    3000番をGETした、ねずねずさんからのキリリク小説。
   今回は今までルヴァさまのお相手をしていない方。季節は夏。そしてさむ〜い一言。
   というリクでした。とりあえず、今までお相手になっていない人ということで、
   オスカーさまにしました。理由はただひとつ。
   さむ〜いセリフをはいてくれると思ったから・・・。
   ところが蓋を開けてみたら、全然そんなセリフをはいてくれませんでした。なぜ?
   季節は夏ということでしたので夏といえば花火?という感じで花火ネタです。
   かな〜りお待たせしたにもかかわらず、こんなへぼへぼ小説で申し訳ない・・・。
   これに懲りずにまた遊びに来てもらえるとうれしいです。
   しかし今回書いていて何が大変だったかって言うと、言葉づかい。
   考えたらオスカーってルヴァ様に敬語使わないんですよね。
   最初普通に敬語で話を書いていて手直しをかけたのですが、
   やっぱり敬語が抜けない。
   ところどころどこがオスカー?って言う所があると思いますが、
   それはご了承ください。




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