<A HAPPY NEW YEAR>



時間の流れに取り残されたようなこの聖地でも
確実に時は流れているのだと言う事を確認できるのは
自分の誕生日とこの日なのかもしれません。
常春と言われるこの地でも、ほんの少しだけ肌寒くなり
一年という期間の終わりを教えてくれるような
この風と一緒に。


 「お正月と言えば、ルヴァん家だよね!!」
数年前に「和風」と言われるもてなしで
年が明けるのを祝った事を彼はとても気に入って
それ以来、年末から年始にかけて
私の館で一緒に過ごす事が恒例となってしまいました。
彼はその外見に似合わずに、意外と古風な……というか
古めかしい事にも興味を示してくれます。
正反対なようで実はとても共通点のある彼だから
こんなにも心を開けるのかもしれませんね。
まぁ彼の場合は、そこに彼なりのアレンジを加えて
私をビックリさせてくれるのですけど。


見慣れた道を彼は急ぎ足で駆け抜けていきます。
少し遅れて着いてくる私を気にして、時々振り返りつつも。
そのうちに彼は私に向かって手を差し出してくれます。
そんな時の彼の笑顔は、普段彼が身に付けているどんな宝石よりも
宇宙一美しいと、私は思います。
暫く見とれていると「どうしたの?」なんてもっと笑顔になるので
胸の高鳴りを押さえながらも、そっと手を委ねます。
私の手を取った彼は、ぶんぶんと音が鳴りそうな程腕を振って、
先程よりも軽いステップで歩き出します。
少し戸惑う私を見て彼が本当に嬉しそうに笑うので
何時の間にかつられて、一緒になって笑い出してしまうのですよ。


彼の館を出てくるのが遅かったので
きっともうすぐ年が明ける時間なのでしょう。
聖地に響き渡るように鐘の音が溢れかえっています。
ふと立ち止まると、彼は真剣な眼差しで見つめてきます。

A HAPPY NEW YEAR

そっと呟かれるそんなありふれた言葉も
彼の口から溢れると、宇宙に一つの愛の言葉に聞こえます。
今年もこうして最初に逢う人が彼であるのは
なんて幸せな事なのでしょう。
優しく抱き寄せられて触れるだけの口付けを交わし、
今度は揺るぎない強い力で抱き締めてくれる彼の暖かさに
触れあっている部分から溶けてしまいそうになります。
どうしてそんなに私の心を捕らえて離さないのですか。
今度口に出してそう訪ねたのならば、
彼はどんな顔をして答えてくれるのでしょうか。


寒いから、と名残惜しそうに歩き出す彼に
また手を引かれて私も歩き出します。
そんな後ろ姿を見つめながら、
今年も願わずにはいられないのですよ。

A HAPPY NEW YEAR……
こうして一つづつ年を重ねていっても
貴方をずっと愛していたい、と。
そして、今年も沢山良い事が貴方にあるように、と。







カエル1号さんにお年賀としていただいた小説です。
幸せなルヴァさまとオリヴィエさまが素敵すぎて、アップの許可を取りに行ってしまいました。
快くOKをだしていただけてほんとうにうれしいです。
ありがとうございました。





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